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2019年 新春 第30回 愛知科学教育研究会
日時:2019年1月13日
場所:名古屋市教育館
細胞膜を作る物質の分子模型 分子の形と健康について考える
Hu Tiang 戸田
URL: http://www.me.ccnw.ne.jp/hu_tiang_toda/
メールアドレス:hu_tiang_toda@me.ccnw.ne.jp
その後も改訂追加しています。
細胞膜を作る物質の分子模型を作りました。最近よく話題になる健康問題を分子の形からいろいろと考えてみました。
細胞膜を作る分子の主なものにはリン脂質と糖脂質とステロールがありますが、次の分子の模型を作ってみました。
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ホスファチジルエタノールアミン(リン脂質)
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ホスファチジルコリン(リン脂質)
パルミチン酸とオレイン酸を含む分子
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スフィンゴミエリン(リン脂質)
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ガラクトセレブロシド (糖脂質)
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コレステロール(ステロール)
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ホスファチジルエタノールアミンにコレステロールが水素結合するところを磁石の結合で表す
分子模型を使って想像し、『細胞の世界』の中に書いてある次のようなことを考えてみました。
細胞膜ではリン脂質が二重層をなして膜を作っています。
細胞膜ではリン脂質の分子がその並び方はリン脂質の親水性の部分(模型では赤い酸素が見られる側)を膜の内外の表面になるようにし、
疎水性の端が膜の内部に閉じ込められるように並ぶことが電子顕微鏡で確かめられているということです。
次の写真の左側が細胞の内側で右側が細胞の外側のつもりです。
細胞の内側
細胞の外側
細胞の内側
細胞の外側
細胞の内側
細胞の外側
- 細胞膜の厚さはどれくらいか。電子顕微鏡写真によればこれらの一億倍の分子模型の大きさから想像できる厚さのようです。
- 脂質二重層は液体である。膜内ではこれらの分子はぶるぶると震えながら動き回っているようです。
- 膜は液体のときのみ正常に機能する。
- 脂肪酸の組成が流動性に与える効果とは。
- ほとんどすべての生物は膜の流動性を調整できる。(定粘性適応)
- 飽和脂肪酸からなる脂質はコンパクトに収まる。ということは細胞膜は弾力性がなくなるのだろう。
- 不飽和脂肪酸の混じった脂質はコンパクトに収まらない。細胞膜はしなやかになるのだろう。
- ステロールの膜流動性に対する効果。
- 融解温度に対する二重結合の数の影響。
さらに健康問題を考えるためω3脂肪酸など次の分子模型も作りました。
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EPA(ω3脂肪酸)
エイコサペンタエン酸
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DHA(ω3脂肪酸)
ドコサヘキサエン酸
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DPA(ω3脂肪酸)
ドコサペンタエン酸
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オレイン酸(ω9シス型脂肪酸)
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リノール酸
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ステアリン酸ナトリウム(飽和脂肪酸ナトリウム塩)
石鹸の分子
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エライジン酸(トランス型脂肪酸)
分子の形はステアリン酸に似ているが、二重結合が多く、より硬くなる
- どの脂肪酸が健康にいいのか。細胞膜の中にいろいろな形の脂肪酸が入っている方が隣同士の分子が結びつきにくくなり、 細胞膜がしなやかになるからだを思います。
- ω3脂肪酸が健康にいいのか。ω3というのはメチル基側から3番目のところに二重結合があるという意味だから そのすべてが健康にいいとは言えないと思います。
- 脂肪酸の分子の形が大切ではないか。
- その脂肪酸がいい理由は何か。
- マーガリンはなぜ健康によくないのか。エライジン酸(トランス型脂肪酸)はステアリン酸の形とよく似ているが、 二重結合が多く細胞膜を固くしてしまうのではないでしょうか。
- ω3脂肪酸も取りすぎては出血が止まらないなど病気を引き起こすようである。色々食べて各脂肪酸の混ざっていることがいいのではないか。
数種類の原子間結合と相互作用がタンパク質分子の折り畳みと安定には重要である。
タンパク質の構造維持に共有結合と非共有結合作用である。
その主な理由は非共有結合が多種多様であるうえ、数が多いからである。・・・
非共有結合には、水素結合、イオン結合、van der Waals相互作用、疎水性相互作用などがある。『細胞の世界』
これらのことを考える中で疑問に思うことがあります。疎水性相互作用とはどのようなものでしょうか。
自然界に存在する相互作用は物理では四つの相互作用しかないといいます。
その立場ではどのように説明できるのでしょうか。
アミノ酸の模型を作っていくと自然とキラリティー(掌性)が問題になります。生物由来のアミノ酸はすべてがL型であるのはなぜでしょうか。
必須アミノ酸もL型とD型を作りました。分子模型を作ればこのことは簡単に受け入れることができます。
不斉炭素原子の重要性も分子模型を作る中で理解できるようになりました。
パスツールが疑問に思った酒石酸には三種類の構造異性体が存在することも確かめることができました。
タンパク質の模型も作ってみたいのですが、難しいのでその前に9個のアミノ酸がペプチド結合をした酵素バソプレシンに挑戦しようと思っています。
水素結合やジスフフィド結合がどのように立体的な構造を作るのに働いているかが分かると思います。
これらの結合のモデルとして小さいフェライト磁石を使ってみようと思います。
一緒に考えていただける方はいませんか。
参考資料:
- 2018年11月21日放送のNHK『ガッテン』
- 『細胞の世界』Wayne M.Becker,Lewis J.Kleinsmith,Jeff Hardin 西村書店
- 『生物立体化学の試み 科学の領域選書6』西尾元宏 南江堂
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