我が家にあった古文書の一つに『問屋往来』いうものがあります。
変体仮名のすすめ
板倉聖宜著『変体仮名とその覚え方』の中で江戸時代の庶民の読み物は変体仮名を読めるようになればよいとのことが書いてありました。
さらにをの中で紹介されているもので庶民が寺小屋で文字を習うときよく使われたものとして往来物の例として紹介されているものがありました。
それがそこに紹介されている『問屋往来』なのです。
『問屋往来』
そこで私も変体仮名を覚えて江戸時代の庶民の生活を覗いてみようと変体仮名を覚えてみようとしました。
まだ変体仮名はすべてわかるようにはなっていませんが、この本には江戸時代の職業紹介が頭書きの欄外にあるのです。
読んでみると江戸時代にはこんな職業があったんだと庶民の生活の一部が見えてきました。
まだすべて解明できたわけではありませんが、わかっただけでもここに紹介しようと思い、それをここに紹介することにしました。
最初の文章が読めそうで読めません。どなたか教えてください。
読むことができたところ
読むことができたところ
読めた部分のみ以下に書きます。
舩のゆら里登
一葉能柳河水
にちりそ可免
堂る□□□
よ里蜘蛛いと
をく里天、是に
乗うつりしを見
てはじめ度工
出をるなり。これ
を多く繋天
かかる所を湊と
いふ。荷物を志ら
扁てつむを問
屋といふ。見ぬ
唐乃品々も
多くとりあ川
かふも湊。ことに
舟の湊なるべ
し。佐れバ神代
能巻にも舟を
□た多□□□登
志るをしよし
多のあるへ記
ことなり介里。
まだ私がわかっていないところや間違っているところがあればご指摘ください。江戸の庶民の生活を覗いてみましょう。
本文中にも庶民の生活をうかがわせる生活用品や地名など興味をひくものの紹介が散見されます。
解説は広辞苑で調べたものに少し追加また変更を加えたものです。
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諸職家名盡
職家名 | 読み | 解説 |
---|---|---|
□鞠師 | まりし | 手鞠をつくる職人だろうか。 |
佛絵師 | ぶつゑし | 仏画を描く画工か。 |
絵師 | ゑし | 絵描き 画工 |
打ち物目利 | うちものめきき | うちものとはうちきたえた武器、すなわち刀剣のたぐいのこと。 目利きとはその良否・真偽を見きわめる人。鑑定人。 |
書□目利 | ||
料理方 | りゃうりかた | 料理をつかさどる者 板前 |
研屋 | とぎや | 刃物や鏡などを研ぐ店 またはそれを業とする人 研師 |
金座 | きんざ | 江戸幕府直轄の金貨鋳造発行所。江戸常盤橋門外(現在の日本銀行の地)にあった。 勘定奉行の支配。長を御金改役といい、後藤家が世襲。狭義の金座は座人の事務所で、勘定場・天秤前・出来方色改場に 分かれ、別に分かれ、別に吹所と呼ばれた鋳造工場が付属していた。明治二年造幣局の設置とともに廃止。 |
銀座 | ぎんざ | 江戸幕府直轄の銀貨鋳造発行所。幕府、伏見、駿府に設置したが、 まもなく京都・江戸に移し、また大坂・長崎にも設置。1800年、不正事件のため、四組ともに廃止し、 江戸一カ所のみ再興。銀貨の極印・包装は大国常是家が世襲。明治二年造幣局の設置とともに廃止。 |
朱座 | しゅざ | 江戸時代朱・朱墨を製造し、専売した特許商人 |
大経師 | だいきゃうじ | 經巻・仏画などを表具した經師の長で、朝廷の御用をつとめた者。 奈良の幸徳氏・加茂氏より新暦を受けて大経師暦を発行する権利を与えられた。後世、一般に表具師の称。 |
陰陽師 | いんやうし | 今の呼び方では陰陽師のことか。 |
分銅師 | ふんどうし | 分銅座を参照 秤の分銅をつくる職人か。 |
秤屋 | はかりや | 秤座を参照 秤をつくる職人か。 |
桝司 | ますし | 桝座を参照 穀物を測る桝をつくる職人か。 |
針口 | はりぐち | 天秤の中央にあって針の平均を示すところ。 盤をなした針口を小さい槌で、たたいて針の動きを調節した。 また、平均を示す針のついた天秤。これを作る職人を指すのか。 |
檜皮屋 | ひわだや | 檜皮葺の家。檜皮葺の家を作る職人を指すのか。 |
烏帽子折 | ゑぼしおり | 烏帽子をつくる職人か。 |
装束師 | しゃうそくし | 古代、行幸・大嘗会・御禊・大葬などの際臨時に設けて装飾・設営をつかさどった職。 |
衣屋 | ころもや | 僧衣を仕立て、また、商う人・家。 |
仕立屋 | したてや | 裁縫を業とする人、または店。 |
洗濯屋 | せんたくや | 江戸時代のクリーニング屋さんか。 |
湯熨屋 | ゆのしや | 湯でしめし湯気をあてて布のしわをのばすことを業とする人 |
練物屋 | ねりものや | |
石帯屋 | いしのおびや | 石帯屋を参照。石帯とは束帯の袍の腰を束ねる革帯 |
翠簾屋 | みすや | (すいれんし) みどりのすだれ(あおすだれ)を商う人。 |
袈裟屋 | けさや | 袈裟とは僧侶の復。左肩から右腋に右腋下にかけて衣の上をおおう長方形の布。 イロハ青・黄・赤・白・黒の五色を避け、いくつかの布をつぎあわせて作る。大小によって、五条・七条・九条~二十五条の三種に分かつ。 国・宗派によりその種類を異にする。袈裟を作る職人を指すのか。 |
鏡師 | かがみし | 鏡をつくる人。または鏡を磨く人。 |
時計師 | とけいし | 時計をつくる職人か。 |
太刀師 | たちし | 刀をつくる鍛冶屋か。 |
屛風屋 | びょうぶや | 屛風をつくる職人か。 |
組屋 | くみや | 糸でひもなどを組むを業とする家。組糸屋。またその職人 |
眉作 | まゆつくり | 江戸時代の美容師か。 |
吹□□ | きせる | |
鍛冶 | かじ | 金打(カヌチ)の約転 金属を鍛えて種々の器物を造ることこと。またはそれを業とする人 |
琴屋 | ことや | 琴をつくる職人か。 |
鼓師 | つづみし | 鼓をつくる職人か。 |
面打 | めんうち | 仮面を作ること。またその人。特に能面の製作者。江戸時代には世襲となり、 越前出目家・大野出目家などが著名。 |
木地師 | きぢし | 木地屋に同じ。ろくろなどを用いて木材から盆や椀などの日曜器物を造る人。 |
唐物屋 | からものや | 唐物を売買する商人。とうぶつや。古道具屋 |
宮大工 | みやだいく | 神社・宮殿の建築を専門とする大工。 |
弓師 | ゆみし | 弓をつくる工人。ゆみつくり |
矢師 | やし | 矢を製作する江巧 |
弦指 | つるさし | 弓弦作る職人。つるかけ |
楊弓師 | やうきゅうし | 楊弓を作る人 |
笙作 | しゃうつくり | 笙をつくる職人か。 |
佛師 | ぶつし | 仏像をきざむ職人。仏工。ぶし。絵佛師。仏所 |
印判屋 | いんばんや | 印判とは印章。印形。印。したがって印判をつくる職人か。 |
蒔絵師 | まきえし | 蒔絵を専門の業とする人.cf.塗師 |
表具師 | ひょうぐし | 表具を職とする人。 |
餝屋 | かざりや | 飾職に同じ。金属簪・ブローチ・金具などの細かい細工をする職人 |
具足屋 | ぐそくや | 具足師。甲冑を製造する職人 |
鞘師 | さやし | 刀の鞘をつくる職人。 |
槍屋 | やりや | 槍師。槍をつくる人。 |
束巻 | つかまき | 柄屋。刀剣の柄を毛・革などで巻くことなどを業とする人。柄巻師 |
鐘木師 | しゅもくし | 鐘木とは仏具の一つで、鐘・鉦(たたぎがね)・磬(けい)などをうちならす棒。多くは丁字型を示す。 |
桶屋 | おけや | 桶や井戸側などを造り、または桶の修繕などをし、、または㋾れを売る家。また、その人。 |
硯師 | すずりし | 硯切(石を切って硯を製することまたはその職人)のことか。 |
墨師 | すみし | 油煙または松煙を膠液で練りこれに香料を加え型に入れて固めた墨をつくる職人か。 |
筆師 | ふでし | 筆をつくる業の人。筆司。筆匠。筆をとって書く人。書記。 |
紺屋 | こんや | (こうやとも)染物屋。元来は藍染め業者をいったが、のち染物を業とするものの総称。 |
箔屋 | はくや | 金銀箔を製造し、または販売をする家や人。箔打 |
帯屋 | をびや | 帯を扱う商人 |
瓦師 | かはらし | 瓦を焼く職人。瓦屋根をふく職人 |
仕立屋 | したてや | 裁縫を業とする人、または店。 |
畳指 | たたみさし | 畳をつくる職人か。 |
縫物屋 | ぬひものや | 縫物師。裁縫や刺繍を仕事とする人。 |
切付屋 | きつつけや | 切付とは下鞍(ぐら)の一種。 下鞍は二枚重ねが普通で下を肌付(はだつけ)、上を切付という。多分、切付をつくる職人のことか。 |
中野三敏著 岩波新書『和本のすすめ』を読むと和本を作るためにこんなにいろいろな仕事があるのだとびっくりするほどです。
この本の中からその仕事に関する言葉を拾い出した見ました。
本屋、書肆、書物屋、書物問屋、物の本屋、地本屋、草紙屋、版元、
版木屋、表紙屋、経師屋、暦屋、
我が家の古書
変体仮名に興味を持ち、我が家古い書籍を調べてみたら、変体仮名を使っているものがまだ少しありました。
『俳諧新式』は有名な書籍のようですね。ネットでも検索にかかりました。
変体仮名など江戸文字の各州にふさわしいものが我が家にもあることを思い出しました。
『凶荒図録』の現代表記付き
我が家の古書
書名 | 編・著者 | 版元出版 | 印刷・出版時 | 解説 |
---|---|---|---|---|
『問屋往来』 | 鶴屋喜右衛門 | 明治24年(1891) | 江戸時代にはこんな職業があったのか。庶民の生活がみえてきます。寺小屋での教科書 変体仮名の練習に良い。 | |
『實語教童子教』 | 甘泉堂 | 弘化二年(1845) | 子どもたちに教え諭す内容と思われます。変体仮名の練習に良い。 | |
『俳諧新式』 | 御溝水頭白梅園主 鷺水 | 洛陽書林柏屋種充?山岡四良兵衛 甚四良 | 元禄11年2月26日 | 連歌の解説書?188丁 いろいろ版元はあるが、京都大学、九州大学、早稲田大学、金城学院大学の図書館にも所蔵しているものがある。題簽が剥がれ落ちている。 |
『萬寶書林文法証?鑑』 | 萬寶書林? | 手紙の書き方 庶民の生活が見えてきます。 | ||
『繪入大石良雄十八箇條申開實禄』 | 松下鐵之助 | 松下鐵之助 | 明治27年6月1日三版印刷同月5日断出版 | |
『日光諸社案内記』 | 鬼平金四郎 | 明治23年4月 | ||
『小學讀本 巻三』 | 田中義廉編輯 | 田中古登 | 明治10年3月2日版権免許明治12年3月分版御届 | 明治7年生まれの祖父の学んだ教科書と思われる |
復刻版『凶荒図録』 | 小田切春江 木村金秋三浦明夫編 大島光義監 | 大地書店 | 2010/7/31 | 三大飢餓資料集 江戸文字入門書 明治18年 名古屋刊 現代表記文がついているので、江戸文字入門としてとても良い。 |
祖先がよく読んでいたと見えて傷みのひどいものには『萬寶書林文法証?鑑』という書物があります。子どもの落書きもあり、面白いです。
實語教童子教
實語教童子教
最初は字が読めそうで読めないのです。でも確かなところをはっきりさせればインターネットでその言葉を検索できるので、
最初のページが『韓非子』の話の紹介であることが分かりました。するとだんだん読めるところが増えてきました。
少し読めるようになると面白く感じるようになりました。
弥子瑕
衛の弥子名は瑕
霊公の嬖(お気に入り)太夫なり
衛の法に竊(ひそか)尓
君乃車尓駕(のる)ものは
刖事(脚切り)の罪をしる
弥子が母病めり
人夜弥子に告ぐ
弥子矯て(いつわりて)
君車に駕(のり)て以て帰る
霊公聞いて古れを賢としてのたまふ
孝なるかな母の為の故尓
刖罪を犯さずと
又或日霊公と果園尓遊ぶ
桃を食て甘き有
盡さずして其半を霊公に喰わしむ
霊公の曰く
我を愛するか那
其口尓味ふ事を忘れいて
寡人に喰わしむと
後に色衰え愛緩まる尓及んで
罪を霊公尓得たりとぞ
"有"という字のくずし字がなかなかわかりませんでした。このような場合にはどうすればいいのでしょうか。
他の個所に出てきたものも一緒に考えて推測できるようになり、近藤出版社 児玉幸多編『くずし字用例辞典』とインターネット検索で確認できました。
頭書き
孝弟忠信の意
〇孝はよく父母に事を孝といふ
孝尓も
【参照】出典『韓非子』説難 Web漢文大系 余桃の罪
【参考文献】『変体仮名とその覚え方』板倉聖宜 仮説社
『くずし字用例辞典』児玉幸多 近藤出版社