投げ込み教材の蓄積で真に教えるに値する教育内容の建設を

「面白くない、分からない、くだらない・・・・・・・・・・」この現実にどう応えるか。

 生徒が生き生きとして意欲的に考えるような授業をしたい。
理科の教師ならば誰でも、すべての生徒に高いレベルの科学をきちんと、分かりやすく、面白く教えたい。
自然の構造や法則について学ぶ中で、科学的なものの見方、考え方を身につけて、自ら課題を見つけ取り組んでいくような、学ぶ意欲を育てたい。
生きる意欲も育てたい。そして、科学や技術の成果が社会に及ぼす影響についてもきちんと目を向けさせたい。
たとえ、専門家がうそをついて見えない公害をまき散らすことがあっても、そのデマを見ぬくことができるよう、
「科学技術をすべての国民のために」役立てる、そんな姿勢も育てたい。このように夢は大きい。
 ところが、現実は、たいへん悲観的な状態にある。テストや大学入試で一応表面的には授業が成立していても、
残念ながら現在多くの生徒が理科の授業について「面白くない、分からない、くだらない・・・・・・・・・・」などといい、
理科を学べば学ぶほど嫌いになっていくような、そんな生徒の実態が明らかにされている。
たとえば、20年くらい前、飯田先生が本校で行った調査でも同様なことが見とめられたが、私の前任校での調査からも次のようなことが分かった。
小学校でたいへん好かれていた理科も、中学では暗記科目となり学習意欲がなくなり、
高校ではもう八割くらいの生徒に嫌われている。このことはどの高校でも同じような状況だ。

ではこの現実に、我々身科の教師はどのように応えていったらよいのだろうか。
あの考え方、このやり方でやれば万事うまくいくという、そんな法則は高校の理科教育に見つかっていない。これが現実である。
必要なのは、問題を投げかけたらうまくいったとか、こんな工夫をしたら生徒の目がキラリと輝いたとかいう実践を持ち寄り、分析することである_。
よいものは真似をし、各学校で授業に使ってみる。
そうすれば、その教材が、たまたま何かの偶然によって生徒にうけたのか、真にすばらしい教材かが明らかになる。
この試練に耐えた教材こそが、必要なのだ。投げ込み教材でいいから、真に教えるに値する教育内容を建設しよう。
このような教材を発掘・追試・交流し合いこれをできるだけ多くの職場の実践にかけ、その実践結果を持ち寄る。
そうすれば、視点が変われば、同じ教材にも別の新しい使い道も出てくることだろう。
その教材の意味、系統性、生徒の認識のあり方を論議していく中で、系統的な各種のプランを作成していこう。
これが投げ込み教材運動である。」(「理科ノート」No.10 巻頭言より)

仲間の能力を引き出そう

  教育研究集会などよい教材を見せられても真似ができないことがある。こんなときどうすればよいのだろう。
理論面を得意とするものもいれば、実験が得意で他人を足元にも寄せ付けないような芸を見せる者もいる。
でも個人では必ず得手不得手があり、能力にも限界がある。だから、その人その人の得意とするところを互いに認め合い、協力すれば問題は解決する。
同じことをするのに多くの人がまた同じ苦労をすることはない。
お互いの秘伝を公開し合おう。理科の仲間だけでなく、我々の身の回りを見まわしてみよう。するときっとすばらしい能力を持ち合わせた仲間が見つかることでしょう。
そんな人に知恵や能力を貸してもらえばすばらしい教材を作れるでしょう。仲間の能力を引き出そう。
 後に紹介する歯車を使った楽器の製作については名古屋市立工芸高校の機械科の先生方や本校桜井先生のお父さんにまで協力していただき、
大量生産にこぎつけ、他の学校にも紹介してあげることができるようになった。
以下に私自身の興味がかき立てられたり、学ぶに値すると思う話題をいくつか紹介する。

物にはすべて重さがある
個別法則[低滑車は力を1/2にしない」 ペンキ屋の冒険

本質を理解すれば物が作れる

 物が分かるとはどういうことか。一言で分かるといっても、いろいろな段階がある。それの順番に挙げてみよう。

  1. まず始めは、授業のように、他の人の説明を聴いたり、本を読んだりして理解する。
  2. 他の人に自分お言葉を使って説明できるようになる。他人に説明をするためには聴いて分かる段階より否でも応でもさらに高い認識段階に飛躍しなければならない。
  3. しかし、これだけでは、まだ本当に理解したとは言い切れない。
  4. 第三段階として、本質をしっかり身につける最高の認識段階がある。
    自然科学についていうならば、自然法則を完全に理解していれば、それを使って、物を作ることが出来るはずである。
    自然法則を意識的に適用し、新しい物を作る。すなわち、技術と結び付けて始めて、本質を理解したといえる。
    「最高の認識段階にまで到達しよう」と生徒に訴えるものとして、楽器を作る話題を紹介する。
    「楽器の音の高さは発音たいの振動の基本振動数によって決まる」このことを理解すれば、楽器が作れるということだ。

A ベトナムの楽器クロンプット
B 歯車楽器

まとめ

 以上のように具体的な実験を通して法則を理解させるように、授業の工夫をすることが大切だと思う。

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