物にはすべて重さがある

「物にはすべて重さがある」これは当たり前のことである。このことは当たり前だといって放っておけば、何の進歩も生まれない。
一度このことを法則として捕らえ、このような視点で身の回りのことを見回してみることにしよう。
すると、今まで見えないものが見えてきて、きっと新しい発見があり、毎日が楽しくなってくるでしょう。
仮説実験授業の「ものとその重さ」の中にある文章にすこし手を加えさせてもらい、紹介します。


 今から350年ほど前、イタリアに「物にはすべて重さがある」このことを法則として捕らえ、
30年にもわたり秤の上で生活しはじめて人体の物質代謝の研究をした医者がいた。
この人はサントリオ・サントロといい、イタリアのパドバ大学の先生である。
彼はいろいろな道具を使って医学の問題を数量的に研究することを始めた人である。
体温計を始めて考えたのもこの人である。サントロ先生の書いた「医学の力学的原理」の中に次のようなことが書いてある。

 「毎日秤の上で生活し体重がどう変わるかを調べた。
普通、人の体重は食事をすれば、必ず食べた分だけ体重が増え、排泄すればその分だけ体重が減る。
そしてまる1日経つとまた同じ体重になっている。
ところがその間に食事として食べた量が3600gであってもその分だけ排泄していない。
大小便として外に出したのは、わずか1350g程であった。物にはすべて重さがあるから、何か気がつかないうちに逃げていくものがあるはずだ。
この残りの2250gのものはどこへいってしまたのか。」
サントロ先生は、人間の吐く息の中に水分が混ざって逃げていくのではないかと思ってそれを調べてみた。
実験より、1日中に吐く息の中には水分の重さが約250gあるだろうと推定できた。
 「さて、こうなるとこの他にも知らないうちに身体から何か出ていっていることになる」サントロ先生は、こう考えて他の原因を探した。
いろいろの実験の末に、大発見をしたのだ。
人間は誰も気がつかないうちに皮膚全体から絶えず、水分を蒸発させている、ということをつきとめたのだ。

 サントロ先生は、このことを確かめると、「はっ!」と思い当たることがあった。
「急に体重が増えるとき、よく高熱で身体がえらい。これはきっと皮膚からの水分の蒸発が少なくなっているからに違いない」と考えた。
それからは、サントロ先生は診察にやってくる患者の食事の量と大小便の量を調べ、水分の蒸発の少ない患者には、汗を出させる薬を飲ませることにした。
 サントロ先生は解熱剤の考え出したのだ。薬の種類は違うけれど現在の私たちも解熱剤のお世話になり汗をびっしょりかくと楽になってくる。 サントロ先生のお蔭である。
 サントロ先生の時代には、まだ医学の科学的研究は、ほとんど始まっていなっかった。
だから、サントロ先生の考えにもいろいろと、間違ったところもあったが、サントロ先生が、 医学の研究に秤や温度計を使ったことは、たいへんすばらしいことである。

医学の研究は、この頃から、サントロ先生などのお蔭で、科学的に進歩するようになったのである。
 サントロ先生ほどの大発見は出来ないが、私が「物にはすべて重さがある」ということにめのつけどころにして、気がついたことを2点紹介する。
皆さんも同じようにして新しい発見をしてください。

  1. どこの家でもよく使うマヨネーズは、ベタベタしてなかなかきれいに全部使い切ることができない。
    容器をいくらしごいても容器について残ってしまう。ここで、目のつけどころ「物にはすべて重さがある」より考えてみよう。
    いくら粘っこくてもマヨネーズにも重さがある。だから地球に引っ張られ、低いところへ落ちていく。
    だから冷蔵庫にしまっておくとき、容器を逆さにして置いてください。
    次に使うときには、マヨネーズは容器の口のところに下りてきて、容器に残る分は、わずかでほとんど全部使い切ることが出来るでしょう。
  2. 雨の日、渡り廊下を歩くとき、水溜りを避けて、ピョンピョンと跳んで歩かなくてはならない。
    窓をつけて欲しいものだ。でも、たとえ窓のない設計でも、工事をやる人が、ちょっと工夫をしてくれたら皆が苦労しないのになぁ。
    床の中央をわずかに上げて、かまぼこ型にしておけばよい。
    流れる水にも重さがある。降り込んできた雨も重さのために低いところへと流れていき、水溜りが出来なくなるのだ。
    校内舗装についても同じことが言える。実用新案特許でも取れると思ったが、すでにこのことを考えた人がいたようだ。
    道路の舗装はすべてカマボコ型になっている。残念!

引用・参考文献 「ものとその重さ」 板倉・渡辺 国土社
          「ダンネマン大自然科学史」 安田 三省堂

ペンキ屋の冒険へ進む
物理教育教材に戻る
投げ込み教材と自作教材一覧に戻る