右の図のようにポリ塩化ビニルのパイプをいろいろな長さに切ったものがある。
これはベトナムの山岳民族の楽器でクロンプットというものである。本物は竹の節を抜き、作ってあるが、
竹ではよい物を安く手に入れにくいので値段の安いポリ塩化ビニルの下水用のパイプで作ってある。
では、高校の物理の教科書にある「気柱の振動」の理論を使って説明してみよう。
パイプの一端に斜めに息を吹き込んだり、管の口の近くで手を打ったりすると、その管の長さに応じて定まった振動数の音が出る。
このようにして音が出るのは、管の中の空気(気柱という)が振動して管の中の空気に縦波が出来るためである。
両端が開いている管(開管という)の場合には管の両端の開口部が腹となるような定常波が生じる。
(厳密にいうと、定常波の腹の位置は管口というよりわずかに出たところにある。
この管口から腹までの距離を開口端補正という)
このように管楽器では気柱に定常波を起こして音を出しているのである。
計算ではここで「ど」の高さの音の出せる管の長さを具体的に計算してみることにしよう。
ただし、ピアノやギターでは、平均率音階であり、曲の転調が簡単に出来る反面で、和音がきれいにはならないという。
ここでは最も和音のきれいな純正調にしたがって計算することにした。
「ど」の高さの音の振動数fc=132Hz
管の内径をD=4.4㎝とすると開口端補正 ⊿l=0.6×D/2
=1.32㎝
管の長さを l ㎝とすると、図より、
基本振動数の音波の波長はλ=2(l+2・⊿l)
音波の速さをv=340m/sとし、波の基本式v=f・λを利用して
管の長さを求めてみると、 l=v/2f―2・⊿l
この式に具体的な数値を代入すると、
l=126.15㎝
他の高さの振動数と同様にして求められる管の長さを書いておく。
こんな楽器を作ってみよう。
振動数 | 長さ | 振動数 | 長さ | ||
ど | 132Hz | 126.15㎝ | そ | 198Hz | 83.22㎝ |
れ | 148.5 | 111.84 | ら | 220 | 74.63 |
み | 165 | 100.39 | し | 247.5 | 66.05 |
ふぁ | 176 | 93.95 | ド | 264 | 61.75 |
楽器の音の高さは発音体の基本振動数によって定まるということに基づいて管の長さを計算通りに切る訳だ。
出来あがったものがどの程度に正確に出来ているかどうかを調べるのには便利な道具チューニングメーターがよいでしょう。
管の開口端の近くで手を打つと、この管の空気(気柱)に定常波ができて欲しい高さの音が出せるのである。
しかし手の打ち方に少しコツがあるので練習する必要がある。先ず手を打つとき、手と手の間に卵が入るような形にすること。
次に注意するのは親指の先に開いた隙間から空気が飛び出したとき、管の気柱を振動させるため、この親指の先の隙間を管の開口部に合わせて手を打つこと。