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2.2 一般市民の被曝限度

【問題3】一般市民の被曝限度
原子炉規正法によれば放射線管理規制区域外の被曝限度は平常時1[mSv/年]といわれるが、その量はどれくらいだろうか。

一般市民の被ばく限度 (1) 1[mSv/年]といっても決して少ない被曝量ではない。毎秒一万本(10,000Bq/s)の放射線を1年間浴び続けると、1[mSv/年]という値になる。
体重50kgの人が1年間1[MeV]の放射線を1万ベクレル被曝するときの被曝線量は

E = 104*106*1.6*10-19*365*24*60*60÷50[J/kg]

= 1.009*10-9[Sv/年]
= 1[mSv/年]


ここでは矢ケ崎克馬著『ひろがる内部被曝』本の泉社の14ページにあるQ7という問題を考えてみました。

Q7 私たちの1年間の被ばく限度値は平常時で1[mSv](ミリシーベルト)といわれますが、その量はどのくらいなのですか。
1[mSv]といっても決して少ない被曝量ではありません。毎秒1万本の放射線を1年間浴び続けると、1[mSv]という値になるのです。
分子切断は人間のすべての細胞当たり100個にもなる非常に危険な量です。
自然環境に既に存在している放射線以外に原子炉からの放射性物質の放射線をこれだけ浴びると、健康被害は大変なものになります。
チェルノブイリ周辺の健康被害では、平均 1[mSv]以下の被曝で、10人に一人の子どもが甲状腺の病気にかかり、
男性の平均寿命が15年も短縮するなど、大変な被害を記録しました(ウクライナ・ルギヌイ地区など)。

この毎秒10000本の放射線を被曝したときの被曝量というのを計算してみました。

1[Mev]のガンマ線10,000Bq/sを1年間浴びたときのエネルギーは
E = 104*106*1.6*10-19*60*60*24*365[J]

体重1kg当たりのエネルギー量が年間被ばく線量となるから
この人の体重がm = 60[kg]とすると
E/m = 104*106*60*60*24*365*1.6*100-19/50
= 1.009*10-3[J/kg]
1[mGy]すなわち被ばく線量は1[mSv]となる。

次に矢ケ崎克馬さんが計算している分子切断は人間のすべての細胞当たり100個にもなるということを計算してみよう。
ここでは分子切断1か所に必要な平均エネルギーを6[eV]とする。
国会事故調査委員会元委員崎山比早子さんが講演会(2014/01/25名古屋法律事務所友の会第32回総会/記念公演)の中では
『Molecular Biology of The Cell 』参照して分子切断に必要なエネルギーは5~7eVとされているので、ここでは中間の6eVとして計算する。
体にある細胞の数は1*1012個/kg
分子切断の数NはE/mを(切断に必要なエネルギー*細胞の数)で割れば計算できる。

N = E/m/(6*1.6*10-19*1012
= 1.009*10-3/(6*1.6*10-19*1012
= 1050

矢ケ崎克馬さんは100、澤田昭二さんの計算では 500 としておられるが、概算としては100~1000これくらいの数値が出ればいいと思う。
核の大きさと細胞の大きさの比は平均でどれくらいになるのでしょうか。
崎山比早子さんが講演会の資料によれば核の直径は8[μm]、細胞の直径は10~20[μm]
崎山さんが細胞の核一つ当たり1個の損傷といわれていることとそれほど矛盾しているとは思わない。矢ケ崎克馬さんの計算よりもこの方が近いのではないか。

(2) 分子の切断の数は人間のすべての細胞当たり100個にもなる。

放射線の透過力

風媒社瀬尾健著(『原発事故 その時あなたは!』より

C-C結合エネルギー = 83.1[kcal/mol]
アヴォガドロ数 N = 6.02252*1023
電気素量 e = 1.60210*10-19[C]
熱の仕事当量 J = 4.1855[J/cal]
したがって C-C結合ひとつ当たりのエネルギーは 3.6[eV]
1[eV]の放射線で分子は何箇所切断されるだろうか。
体重50kgの人の細胞数は(50*1012
個と考えてよい。
放射線を浴びると細胞の中ではその放射線から多くの原子の核外電子にエネルギーが与えられる。
原子が励起され不安定となりそれまで起こらなかった反応が起こることもあるだろう。
ここで はすべてのエネルギーが分子切断に使われたとすると、切断個所はいくらになるか計算してみよう。
( )個にもなる。
体中のすべての細胞がそれぞれ100個程度の分子切断を受けることになる。
染色体のDNAが切断を受ける割合はずっと少ないかもしれないけれど、
細胞の中にあるたくさんの分子が励起されたり、たくさんのイオンの発生を受けたりすることは想像できる。
遺伝や癌の発生だけでなく、いろいろなことが起こっても不思議ではない。
cf. 『ひろがる内部被曝』矢ヶ崎克馬著 本の泉社 p.56

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