コ ン ク リ ー ト 離 型 剤 に つ い て



  1. コンクリート離型剤とは何か
  2. 離型剤の原材料
  3. 離型剤の作用機構
  4. 離型剤の効果に影響を及ぼす諸因子
  5. 離型剤の種類
  6. コンクリート二次製品用離型剤
  7. コンクリート遠心製品用離型剤
  8. 土木・建築用剥離剤
  9. 窯業用離型剤
  10. 使用方法一例

  11. コンクリート離型剤 Q&A

  12. 製品製造時の不具合の現象
  13. 脱型不良に対する対策
  14. 型枠付着物に対する対策
  15. 製品仕上がり面の表面気泡対策
  16. 製品のしみに対する対策

  17. コンクリート離型剤の品質管理
  18. 潤滑油(例:離型剤)の粘度変化計算方法
  19. コンクリート離型剤の分析方法
  20. 油剤の配合処方の概算粘度推定方法
  21. コンクリート離型剤の実験方法
  22. コンクリート離型剤の製造方法
  23. 新たな知見との出会い


・このレポートは、主としてコンクリート二次製品工場で使用されている離型剤の一般的な解説とその現象についての考え方を述べたものです。
・当ページは、リンクは、フリーです。
・この情報を応用・適用する場合は、ユーザーの責任の範囲であることをご了解ください。
・情報源との新しい出合いを求めて、沢山の所にリンクさせて戴きました。不都合・不具合の場合、改善いたします。ご一報をください。(→O.Yamanaka )
( 総合案内⇒座右のページ「道案内」 )


1.コンクリート離型剤とはなにか?

   コンクリートの離型剤は、工場或いは現場によって、製造製品の種類や製造方法等が異なり、それぞれ対応する離型剤が工夫され、各方面に供給されています。いろいろな条件の違いが現存し、どこにでも通用する離型剤というものが難しい状況にあります。離型剤のユーザーは、それぞれ自分のコンクリート現場に適合する離型剤を選定あるいは適合工夫させることが必要です。

(1)コンクリート離型剤(剥離剤)とは、コンクリート型枠表面に塗布して、コンクリート製品が型枠に固着するのを防ぐ働きをする化学製品です。

大きく見て、油性タイプ、水溶性乳化タイプ、ラッカータイプがあり、製造品目に応じて、使い分けられています。
離型剤の組成は、現場で要求される離型力の強さに応じて、@型枠からの離型を可能にする成分(離型成分)、A型枠からの脱型を助ける成分(潤滑成分)、B塗布作業性・塗膜厚さの調節成分(希釈成分)等を調節して、現場の要求に合うよう、各成分が構成されています。

・コンクリートの打ち込みに先立って、あらかじめ型枠の内面に塗布する。
・型枠とコンクリートの付着を防ぎ、型枠の取り外しを容易にする。
・コンクリート製品の表面の美観をだす。
・型枠を保護して、型枠の寿命をながくする等の働きがある。
・同様に使われている言葉:離型剤、剥離剤、型抜油、剥離油、モールドオイル
・離型剤(英語):release agent、releasing agent、form oil、mold lubricant、 mold release agent、mold-releasing agent、molding lubricant、 parting agent
・型枠(英語):form 、mold、mould、formwork  
・コンクリート離型剤・剥離剤(英語):concrete form release agent、concrete form oil、concrete mould oil が一般的なようです。 
・コンクリート離型剤(ドイツ語):Betontrennmittel

(2)コンクリート製品の不具合発生に対する考え方

・コンクリートの最終製品が出来上がるまでのどの製造工程も、不具合発生の原因となりうる。

参考資料:コンクリート製品工場の一般的な製造工程と不具合原因と原因となるかもしれない事柄

製造工程

不具合原因と原因となるかもしれない事柄(要因)

コンクリート原材料、及び離型剤等の受入れ セメント(種類、メーカー、単位配合量)、 骨材(種類、産地、粗粒率、性質)、水(水道水、工業用水、リサイクル水)、 混和材料(混和剤・混和材)(種類、添加量)、 離型剤((離型剤の選択、粘性、成分、型、潤滑油分、塗布方法、塗布量、塗布場所、離型剤の保守・管理、リサイクル使用等)
材料の貯蔵 場所(屋内・屋外)
材料の計量 調合補正(含水量、泥分)
練りまぜ ミキサーの種類、混合時間、混和剤の投入方法
運搬 運搬方法(ライン・定置、コンクリート運搬車、ミキサー車)
型枠 材質(鋼製、アルミ製、コンパネ、セラミック、樹脂塗装品等)、  離型剤塗布方法(適量塗布確認と過剰分除去)、塗布後の時間、置場、複雑な型枠、大小、高さの大小等
打込み コンクリートの投入(ライン・定置、打設方向)、フレッシュコンクリートの特性(年間安定した作業性の良い流動性、季節変動を加味した使用適正)
締固め 成型方法(振動成型:テーブル・サイド・棒バイブ、往復振動)、 遠心成型、 プレス成型、 振動プレス成型振動成型、 ローラープレス、 押出し成型 ) 成型条件( 振動条件(低周波、高周波)、(振動成型時間)(有・無・弱)、 遠心成型、 プレス成型、振動プレス成型振動成型、 ローラープレス、押出し成型等夫々の条件 )
表面仕上げ こて仕上げ、表面調節剤
養生 養生方法(水蒸気、加熱空気、常温、シート、養生室、位置)、養生開始(前置き時間. 養生条件:時間、温度、湿度)場所、屋内、屋外、シート
脱型 脱型強度.脱型時の型枠の状態(遠心型枠の上下を外すか上下の型枠を外さないで緩めて押し出すか) 脱型方向(そのままか、型枠を回転、立て方向、横方向をかえるか) 方法(自動ライン吸引脱型、定置)
製品検査 形状・寸法・外観
製品の貯蔵 屋外、シート覆いをかける、製品の積み置き方法等
出荷 扱い 破損、事故 等
型枠   掃除
離型剤塗布
鉄筋の配置、組み立て
清掃(十分、不十分)、何もしない
離型剤(種類の選定)。 塗布方法(適量・過不足等)。 離型剤(種類の選定)
正常、異常ミス
正常、トロもれ

(3)離型剤に期待できる効果

・「離型剤についての一つの基礎的な考え方を理解する」と、「現在使用中のの離型剤で起きている問題点が、離型剤で解決できる課題なのかどうか」、「離型剤の限界はどこまでか」がはっきりして、クレーム解決の方向付けが容易になると思います。
特性要因図

2.離型剤の原材料

・メーカーにより、得手もあれば不得手もあり、それぞれ特性があります、あくまで一般的な一例です。日本特許情報やCA(ケミカルアブストラクト)には、沢山の原材料を見ることが出来ます。

市販品は、原材料に天然物を原料の一部として使用している場合が多く、成分の分析をしても化合物の分布状態が広くて、当然の結果として、全てが分析できるわけには参りません。このような働きをするグループだ、という所までは判明します。したがって、この表では、成分も特定の有機化合物名そのものを指さず、代表的な化合物グループを表しています。

この表は、離型剤絡みの何らかの不具合が起きたとき、問題解決の方法を考える時に、 離型剤の原材料物質は、概してこのような働きをするものだというを了解していると、正しく原因を推定しやすくなります。

・化学物質は、一般的に使いすぎれば弊害が出ます。


成分

原材料

役割

型枠に付着する力
鉱物油 ミネラルターペン・灯油・軽油 弱い潤滑効果、油性タイプの溶剤、粘度調節 極めて弱い
スピンドル油・トランス油 弱い潤滑効果、弱い離型効果、粘度調節 弱い粘着性あり
マシン油 潤滑効果、弱い離型効果、粘度調節 粘着性あり
タービン油 潤滑効果、弱い離型効果、粘度調節 粘着性あり
モーターオイル・シリンダー油等の高粘度潤滑油 潤滑効果、弱い離型効果、粘度調節 粘着性強い
離型用添加剤 カルボキシル化合物 離型効果、消泡効果、潤滑効果、防錆効果 強〜中
天然ワックス・ワックス誘導体 離型効果、キャリア 中〜強
脂肪酸誘導体・金属石鹸 潤滑効果、離型効果 中〜強の付着力
合成樹脂 離型効果 強力な付着力
補助添加剤 油脂(動物性・植物性)・脂肪酸エステル 離型性・油性向上(特に低温時脱型促進) 強〜弱
界面活性剤(非イオン系、陰イオン系) 消泡効果、乳化効果、分散効果、湿潤効果、拡張効果
(ものによっては離型効果、型枠付着性向上、防錆性向上もある、また逆に(マイナス効果に)働くものもある)
強〜弱
防錆添加剤 防錆、離型効果(逆の場合もある) 強〜弱
ポリブテン・PMMA等ポリマー 油性向上、油膜の厚さ調整 弱い付着力、粘着力
有機染料 着色、判別用着色
水溶性離型剤の媒体 希釈剤、潤滑効果 弱〜無
アルカリ類 脂肪酸その他酸類の中和・乳化助剤・防錆助剤 脂肪酸その他酸類の中和
酸類 錆び落とし、コンクリート溶解剤の製造 酸の働きで分解 -
消泡剤 離型剤自体の消泡・コンクリート表面の消泡 消泡・抑泡

3.離型剤の作用機構

・コンクリート離型剤(剥離剤)とは、コンクリート型枠表面に塗布して、コンクリート製品が型枠に固着するのを防ぐ働きをする化学製品です。その成分系統を分類すると基本的に3つのカテゴリーに分けられます。すなわち、化学反応型 [ Reactive ( or chemically active ) type] 、物理型 [ Barrier type ]、潤滑型 [ Lubricant type ] です。現実の使用に当っては、それぞれの特徴を加味した混合型も多々使用されています。


カテゴリー

型枠上にある離型剤と投入したフレッシュコンクリートとの間の離型剤の働き方 (特にセメントとの反応メカニズムについて)

長所

短所
化学反応型 @離型剤に配合されたカルボキシル化合物がセメントアルカリと反応して金属石鹸を作る。
(この反応は二段階で進む。まず型枠上に塗布された離型剤中のカルボキシル化合物と投入されたコンクリート中の苛性ソーダ(ナトリウムイオン)又は苛性カリ(カリウムイオン)とが反応して水溶性の石鹸(脂肪酸石鹸)が生じる。この物質が型枠と接するコンクリート製品表面の空気泡を減少・消滅させているようだ。この水溶性の石鹸は、コンクリート中のカルシウムイオンに出会うと直ぐに反応して水に不溶のカルシウム石鹸(乾燥すると白い脆い粉、油を含んだ状態ではグリース状の物質)を型枠表面上に生成する。) Aこの境界線上に生成した金属石鹸が離型効果を発揮する。
カルボキシル化合物の量を加減して離型力を調節できる。
製品の表面気泡が一般的に少なく、表面が一様である。
白い金属石鹸の粉が表面に生成する。
過剰塗布すると油しみ・変色、硬化不良・欠落・油泡が出やすいため、過剰分を除去する必要がある。
物理型
(バリア型)
セメントアルカリとの反応性は弱いか、又は反応性は無い、物理的に吸着する程度である。主に型枠上に吸着されて、型枠上にコンクリートを付着させないような障壁をつくる。 脱型後の型枠には付着物が少ない。
過剰塗布しても、油しみを生じにくい。
製品の表面気泡が一般的に多い。油泡は出易い。
極端に強い離型剤は配合・調整し難い。
潤滑型 セメントとは弱い物理吸着する。プレスの上下表面に潤滑油膜をつくり、潤滑する。潤滑の効果が大いに必要とされ、単なる物理型或いは化学反応型では、機能的に対応できない。プレス後離型性を必要とする場合と必要としない場合がある。 潤滑性が調節できる。 潤滑性は油性の方が水溶性より効果が勝る。
廃水処理,作業環境等を加味すれば、一長一短あり。
( 備考)
(混合型)
(化学反応型と物理型の混合。
どちらの成分を多く含有させるかで、性質が変わる。両者の性質を示す。化学反応型の変形と見ることができる。)
(化学反応成分を多く用いることによって、離型力を調節できる。) (幾分気泡が多い傾向がある。)


4.離型剤の効果に影響を及ぼす諸因子

・影響の大きさを表す記号:大→●●●、中→●●、小→●、殆ど影響なし→○
・条件を変えてコンクリートを打ち込むとき、影響諸因子の該当項目で、予想される影響が ●●以上のときには、目安として不具合は起き
 やすい。

備考:経験的評価です。測定値データではありません。
 

影響諸因子

変化の要素

脱型性

型枠付着物

表面気泡

表面の色
離型剤自体の要因 離型剤の選択、粘性(高粘度、低粘度)、離型成分(化学組成、品質、物理特性特に吸着性・粘性・極性・溶解性・消泡性・気温の変化への対応性、適正な配合のバランス)、化学反応型・バリア型、潤滑油分(高粘度・低粘度)、塗布方法、塗布量(過剰塗布・適当量塗布)、塗布場所、製造現場での離型剤の適応性、離型剤の保守・管理、リサイクル使用等 ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
型枠の材質 鋼製、アルミ製、コンパネ、セラミック塗装鋼板製、
合成樹脂塗装品(エポキシ、ポリウレタン、ポリエステル)、合成樹脂型枠・シート、コンクリート製品表面 等
●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○
セメント種類 普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、高炉セメント 等 ●●〜○ ●●〜○ ●〜○
セメント配合量 例えば400〜500kg、270〜350kg ●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○
混和剤 プレーンから混和剤を入れたとき
混和剤の種類を代えたとき
AE減水剤から高性能減水剤に代えたとき
メラミン系のとき、ナフタリン系のとき、特にポリカル系のとき
●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
混和材 セメント以外の微粒子成分(例えばタンカル)の量を増やしたとき ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
型枠放置時間 離型剤を型枠に塗布後、コンクリート充填するまでの時間(例えば5分〜30分、2時間〜4時間、一日〜数日 ●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○
型枠の設置場所 屋内作業か、屋外特に紫外線の当たる場所かその設置場所 ●●〜○ ●●●〜○ ●●〜○ ●●●〜○
製造形態 自動ライン製造、型枠定置式製造、型枠移動タイプの製造 ●●〜○ ●●〜○ ●●〜○ ●●〜○
製品形状寸法 一般品(大型、中型、小型製品)
特殊型枠製品(凹凸に富む型枠等)
●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
製品打設方法 立て打ち、横打ち ●〜○ ●〜○ ●〜○ ●〜○
生コン 材料の混合割合(コンクリートミックス)
混合方法
フレッシュコンクリートの性質(スランプ、フロー、空気量の安定持続性)
型枠に投入するまでの時間
●●● ●●● ●●● ●●●
成型方法 振動成型方法(テーブルバイブ、サイドバイブ、棒バイブ、往復横振動)
振動機の位置
周波数(低周波、高周波)
振動成型時間
振動の有無(無振動〜弱振動成型)
遠心成型
プレス成型、振動プレス成型
●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
養生 前置時間
養生方法(蒸気養生、ガス養生、オートクレーブ養生)
養生時間
●●● ●●● ●●● ●●●
脱型 型枠の開閉の有無(オープンか押し出しか)
脱型時の方向(鉛直方向、水平方向)
●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○
後養生 製品の積み方
雨水
気候・気温・特に寒冷期のエフロレッセンス
--- --- --- ●〜○○
環境的な現場の要求 離型剤の流出環境汚染 ●〜○ ●〜○ ●〜○ ●〜○
季節への対応 離型剤粘度変化、冬季水溶性離型剤の代わりに油性使用 ●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○
脱型強度の低い現場 脱型表面強度の低い現場(随道、下水道等) ●●●〜○ ●●●〜○ ●〜○ ●〜○
打ち接ぎ モルタル、コンクリートの打ち接ぎ面  ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○ ●●●〜○
原料事情の変化 環境規制、精製純度の要求、発ガン性問題等 ●●〜○ ●●〜○ ●〜○ ●〜○


5.離型剤の種類

   ごく一般的な市販の離型剤を外観・溶解性・使用方法から分類すると、次のようなタイプが見られる。


外観

溶解性

使用方法

使用される現場
黄褐色
油状
油性 原液使用 二次製品全般、側溝
ボックスカルバート、擁壁、共同溝
セグメント
高流動製品
土木・建築、プレハブ
気泡コンクリート、起泡コンクリート
耐火コンクリート製品
ミキサーの清掃容易化補助
油性 灯油又は軽油で希釈して使用 二次製品、バイコン、大波スレート、スレート、セメント瓦
窯業
両溶性
(水性+油性)
水で希釈して乳液で使用
場合によっては油で希釈使用
大型製品(ボックスカルバート、擁壁等)
高流動コンクリート製品
遠心製品(パイル等)
木毛板
セグメント
サイディング材
乳白色
液状〜ペースト状
水性 原液使用 二次製品、土木・建築
水性 水で希釈して乳液で使用 遠心製品(パイル、ポール、ヒューム管等)
油性 灯油又は軽油
で希釈して使用
二次製品、バイコン
黄褐色
ソルベント系液状
油性 原液使用(樹脂タイプ) 遠心製品、二次製品
水性 水希釈使用(ワックスタイプ) 二次製品、土木・建築

   コンクリート離型剤で一番使用量の多いものは、油性の離型剤である。原液で使用し、なんにでも使えて、コンクリートの積層も少ないし、鋼製型枠(主に熱間圧延鋼板)も錆びないで、大変使いやすい離型剤である。

   水性の離型剤は、遠心製品に、或いは土木建築用に使用されてきたが、最近の高性能混和剤の急激な発展に刺激されて、水性離型剤も大いに改良されて来た。最近では、使用が伸びてきている。



6.コンクリート二次製品用離型剤

(1)二次製品用離型剤の選定

どのような離型剤を選べばいいか、見当をつける項目を挙げる。
@油性か水性か
A何を製造するか(形状・大小)
B混和剤は、何か
等をイメージしながら、次表を参考にして、どのあたりの性能を要求される離型剤が、現場で適当か目安をつける。
        
離型剤の
溶解性
離型剤の
使用方法
混和剤の種類 何を作るか
(製造品目)
形状寸法 離型剤の粘度 離型剤
油性
原液使用 プレーン(無使用)
AE減水剤使用
二次製品全般・小物 N1
N2
N3
メラミン系混和剤 大型製品、二次製品 N4
N5
N6
ナフタリン系混和剤 ボックスカルバート・擁壁等 N7
N8
N9
ポリカル系混和剤 特大(共同溝)、二次製品全般 N10
N11
N12
特殊建築部材系混和剤 建築部材 N13、N14
希釈使用(灯・軽油) 全般 二次製品全般 中・小 中・小 N15
小物 N16
溶剤タイプ(原液使用) プレーン・AE減水剤・高性能減水剤大型製品 N17
ナフタリン系混和剤 大型製品 N18
水性
原液使用 プレーン・AE減水剤 中・小型製品 中・小 N19
メラミン系・ナフタリン系・ポリカル系 大型製品 N20
希釈使用(水) プレーン・AE減水剤 中・小型製品 中・小 N21
ナフタリン系・メラミン系 プレハブ等 N22
メラミン系・ナフタリン系・ポリカル系 大型製品・セグメント・水槽・浄化槽 N23

(2)製品の仕上がりや、型枠付着物の大小等,不満足はところが現れたら、離型剤の構成成分や、セメントアルカリとの反応性等を考慮して、不具合な点を解消する方向に進む。
(3)離型剤の選択は、油性を使用する場合は、N1〜N18までの中から、水性を使用する場合は、N19〜N23までの中から該当する番号を選択し、離型剤メーカーと相談して、第一段階のテストサンプルに選べばよい。
(4)最終段階で離型剤の選定は、使用者サイドもメーカーサイドも出来る限り、種類を押さえる。






7.コンクリート遠心製品用離型剤

7-1.離型剤の選択

(1)使われている離型剤は、油性タイプ、水性タイプ、溶剤タイプが使い分けられている。離型剤の効果分担が行われている。
(2)油性タイプは、型枠にノロが残存しない、型枠ネジ部分の潤滑性が良い等の特長を有する。  
(3)水性タイプは、水で希釈するので、経済性に優れ、一番安価である。  
(4)溶剤タイプは、離型性に優れ、冬季の特別冷え込みの激しいときも、コンスタントな離型効果を発揮するので、油性・水性離型剤の冬場離型効果の不十分な時に、補助的に使うとよい。
(5)製造されているコンクリート製品は、混和剤はナフタリン系が市場ではよく使用されている。使用される混和剤によって、離型性は影響を受けるので、混和剤の影響を受けることが少ない離型剤を選ぶことが大切である。

離型剤の外観

溶解性

使用方法

使用される現場

離型剤
黄褐色油状 油性 原液使用 大口径パイル、ポール本体用 C1
原液使用 型枠部品に使用 C2
水性 水希釈使用 600mmパイル C3
小口径パイル、ポール水溶性 C4
乳白色エマルジョン 水性 水希釈使用 600パイル、ヒューム管用 C5
水性 水希釈使用 ポール用 C6
黄褐色ペースト 水性 高倍率水希釈タイプ パイル用 C7
黄褐色ソルベント系液状 油性 原液使用 遠心用離型剤不具合時の強力離型剤 C8
油性 原液使用 ヒューム缶用 C9

7-2.不具合と対策・考え方

遠心成型製品製造時の不具合 ・脱型操作の段階→脱型は容易かどうか(脱型性、作業性、製品の破損)
・脱型したあとの型枠の状態→型枠に残存する付着物は少ないか(型枠上のコンクリート付着物の大小、硬軟、清掃の難易、作業性等 )

不具合の現象

原因

原因の究明

対策
型枠を入れ替えた翌日
・脱型不良が起きる
・型にコンクリートが付着する
・型に取られる
・破損する。
離型剤の型枠への塗布の仕方が適当でない 塗り残しがある 型枠面に均一に塗布する
塗布量が不足している 離型剤の適当量を塗布する
離型力が不足している 離型剤を少し厚くぬる。
より強い離型剤を検討する
離型剤の離型力が不十分である 離型成分が不足している 潤滑効果を出す成分が不足している
潤滑効果を出す成分が不足している 養生条件を見直す
養生条件が不適当である 前置き時間が少ない 充分前置き時間を取る
過剰で潤滑成分の不足をもたらした 離型剤を少し多めに塗布する
養生条件の検討
養生不足 養生条件再検討
型枠の保存状態がよくない 型枠表面が乾ききっていない上から、離型剤を塗布しても離型に必要な膜厚が出来ていない 型枠を切り替える前に、乾燥した状態にする。
型枠が冷え切っていて、離型剤が乾かない 付着が予想される時は、前もって付着の起きそうな所へ付着防止剤を塗る
型枠の付着癖がひどい 型枠の再生もしくは更新
コンクリート表面の総合的な表面脱型強度が不足している 設計強度不足 配合の再検討
冬季の冷え込みが極端に厳しい 付着が予想される時は、前もって付着の起きそうな所へ付着防止剤を塗る
配筋の数特に、A種パイルに問題が起きやすい A種の配筋の仕方等工夫は出来ないものでしょうか、差がありすぎます


7ー3.FAQ

Q

Case

・型枠・製品に不具合が発生した

その状態から今使用している離型剤にどのような評価が下せるか
型の入れ替えの時、時たま付着が起きる まずまず可、普通の離型剤
上型表面の中央部分の表面が少し荒れている 硬化不良が少し起きていると思われる。少し薄める。
ボルト、ナットに潤滑性が無い 潤滑油の入った離型剤に切り替える
上型に少し付着がある 少し弱い
下型に付着が起きる 離型力が弱すぎる
所々粘着する 離型剤に粘着成分が多すぎる。離型成分が過多
口径600に使用している離型剤を800〜1000mmパイルの離型剤二使用して良いか より強力なタイプを使用する
水性離型剤の希釈倍率は、どのように変えるか(パイル一例) 小口径 4〜7倍
600mm 4〜5倍
1,000mm 2倍(ラッカー併用)

8.土木・建築用剥離剤

8ー1.FAQ

土木用離型剤・建築用離型剤は、現場において使用されるので、最近では自然環境までも選択の基準に入れられるように、時代とともに変わってきている。                            

Q

離型剤の種類

備考

離型剤
・土木用離型剤には、どのような離型剤があるか 合成樹脂 ポリウレタン、エポキシ樹脂等合成樹脂
塗装合板・加工型枠
A1
合板用油性離型剤 原液塗布使用 A2
合板用水性離型剤 水で希釈して使用 A3
高速道路水性離型剤 原液使用 A4
護岸工事、テトラポット用油性離型剤 原液使用、重量に耐える A5
トンネル・隧道・下水道用離型剤 初期表面強度の低い現場 A6
セラミック型枠用離型剤 型枠に残るカスが少ない A7
・建築用離型剤には、どのようなものがあるか 合成樹脂 ポリウレタン、エポキシ樹脂等合成樹脂
塗装合板・加工型枠
A1
合板用油性離型剤 原液塗布使用A2
合板用水性離型剤 水で希釈して使用 A3
メタルホーム用離型剤(油性) 原液使用 A8
打放しコンクリート用離型剤 (油性)原液使用 A9
ポリスチロール型枠用離型剤 (水性)水希釈使用 A10
建築部材工場生産品
(一部土木部材含む)
ALC用離型剤 用途により使い分ける A11
起泡コンクリート用離型剤 原液使用 A12
サイディング用離型剤 水性(希釈使用)
油性(希釈又は灯油希釈使用)
A13
プレハブ(部分タイル)コンクリート用離型剤 (水性)水希釈使用、省力化 A14
木毛板用離型剤 油性原液使用、水性水希釈使用 A15
大波スレート、瓦、スレート用離型剤 油性灯油希釈使用 A16
建築ブロック用離型剤 油性原液使用又は灯油希釈使用 A17
橋梁・はり製造用離型剤 原液使用 A18



9.窯業用離型剤

9ー1.FAQ

Q

離型剤の種類

離型剤
・どのような用途に応じた離型剤があるか セラミック微粉末振動成型用離型剤 原液使用又は灯油希釈使用 C1
セラミック微粉末振動・プレス成型用離型剤 原液使用 C2
セラッミック湿式成型用離型剤 灯油で希釈使用 C3
アルミナセメント用離型剤 原液使用 C4
耐火煉瓦用練り込み式離型剤 灯油希釈使用 C5
日本瓦・鬼瓦用離型剤 灯油希釈使用 C6
鋳型用離型剤 油性灯油希釈使用 C7

9ー2.どのような離型効果が要求されるか

             

Q

離型剤の種類

要求される性能

離型剤
用途 セラミック微粉末振動成型用離型剤 少量の水を含んだ状態でプレス成型する。このときの表面にすべりを与え、プレス面に粉の付着をさせないように配慮することが必要である。 C1
セラミック微粉末振動・プレス成型用離型剤 振動成型より強い効果が必要である。 C2
セラッミック湿式成型用離型剤 普通の含水物をプレスする考え方と共通する C3
アルミナセメント用離型剤 普通ポルトランドセメントよりも吸着力の強い離型剤を使うことが必要。高粘度、物理型の離型剤まで、考慮が必要。 C4
耐火煉瓦用練り込み式離型剤 一般に油脂・劣化脂肪酸系化合物が使用されている。 C5
日本瓦・鬼瓦用離型剤 離型膜の強い極めて劣化した脂肪酸やぬか油・菜種油・樹脂酸等が使われる場合や、極めて精製度の良いカルボン酸が使用される場合がある。工程上で、希釈する鉱油の均質性が要求される。 C6
鋳型用離型剤 型に吸着性の強いカルボン酸やその塩が用いられることもある。 C7





10.使用方法一例

 離型剤の型枠への塗布方法は、現場の状況・方針・法規制等に応じて適応しなければなりません。塗布方法としては、スプレー、ウエス、スポンジモップ、自動塗布、離型剤加温塗布、ローラー塗布等いろいろな条件が採用されていますが、ここでは、一例として、油性の原液使用タイプの離型剤について述べます。離型剤についての基礎的な扱い方は、共通すると思います。

(1)型枠の掃除をする。

・型枠に付着物がついていると、製品表面が一様に仕上がりません。

(2)離型剤を型枠に、適当量塗布する。

・離型剤の適量は、厚く塗ったり、薄く塗ったりして、製品の出来具合を比較し、ちょうど良い塗布量を決めてください。

・離型剤が全体に塗布されているかどうか、確実に確認して下さい。

・過剰の離型剤は除去してください。

(3)今まで使用していた離型剤を中止し、新規の離型剤に切り替えを行うとき、従来のものを使い切ってから、使用する。

(4)新しい型枠を製造現場ではじめて使用するとき

・型枠に付着している防錆剤を油溶性の使用予定の離型剤で洗い落としてください。その型枠を組み、コンクリートを打ち込まないで、製品と同じようにライン上で養生してから、一回転後(すなわち空打ち後)、型枠を開いて、新たに離型剤を塗布する。コンクリートを打ち込む。離型剤が型枠になじみやすくなリます。離型がうまくいかない時は、もう一度行ってください。

(5)離型剤使用後の空ドラムは、しっかり蓋をして管理する。

・リサイクル使用ができるよう、雨水、セメント、埃、砂等の異物が入らないに配慮する。

(6)離型剤の使用中のものは、新液のドラム又は缶には戻さない。

(7)水性離型剤を使用するときは、適宜撹拌して使用する。



11.コンクリート離型剤 Q&A

(1)離型剤関係

Q

1.離型剤に公的規格はあるか 日本に工業規格はない。メーカーの自主管理規格。
2.離型剤メーカーの品質管理はどのようにやっているか 各社各様。潤滑油の試験に応じて一般性状測定を行っている。
必要に応じてコンクリートの打ち込みテストを行う。
3.離型剤の取扱上の適用法令はどのようなものがあるか 消防法、水質汚濁防止法、下水道法、海洋汚染防止法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律労働安全衛生法表示、MSDSの提出、化審法
4.離型剤の塗布はどのようにすればよいか 適当に薄く塗布する。過剰のたれ落ちた分は除く。いろいろ工夫して自工場にあった最適の条件を見出す。
5.水性の離型剤は使えるか 混和剤使用の拡大により、離型効果が促進され、また配合も進歩し、必需品化してきている。
6.水性離型剤使用のメリットは 油性と比べて、仕上がりの色が白い。表面気泡が少ない。離型性はまずまず可。スプレーしたとき霧が重く、広く飛散しないので作業環境がよい。
7.水性離型剤の上手な使用方法は 液分離がないよう、使用中は撹拌機或いは、循環ポンプの使用等で液が動いている状態で撹拌使用する。異物の混入を嫌います。一度使用した液は元の戻さない。冬季は凍結しないよう、必要に応じて保温する。過剰塗布すると油しみや硬化不良を起こしやすいので過剰分を除去する。
8.水性離型剤のデメリットは 冬季水が凍る所では保温等の処置が必要。
作業開始時前日の終了時のスプレー配管中 の残液を空にしてから新たな液を塗布する.
過度の成分の分離があるとき、付着を起こすことがあるので、いつでも使用安全を成し遂げるため、作業時液が均一になるように撹拌を心がけ・実行する必要がある。
9.油性離型剤の長所は 年中使える。対応の幅が広い。型枠のノロの付着が少ないし、一般に積層しない。
10.油性離型剤の粘度があり過ぎて塗布しにくい より低粘度離型剤を検討する。加温して使用する。
11.油性離型剤を塗布して型枠を一日放置してからコンクリートを打ち込んだとき離型効果が不足する 油が時間とともにたれ落ちても、離型効果がある程度持続する離型剤を使用する。または再塗布する。
12.振動成型をいくらでも強くしたとき、油性の離型剤は対応できるか 対応できない。離型剤層は破壊される。
13.(土建)離型剤を型枠以外の所(鉄筋等)に塗布した、大丈夫か 目的物以外は塗布しない。除去する。
14.(土建)合板に指定倍率以上の極端に濃い倍率で塗布した。大丈夫か。 硬化不良を起こす可能性あり、洗い落として標準倍率で再塗布する。
15.(土建)ポリスチロール型枠に水性離型剤を塗布した。雨が沢山降った。 流失の恐れあるときは、再塗布する.
16.型枠から垂れ落ちたものを回収した。これはもとの離型剤と成分は同じか? 分析結果は同じではない。離型剤の成分の一部はセメントアルカリと反応或いは物理吸着して、金属石鹸もしくは離型剤セメント吸着物質を形成して、離型剤中の有効成分が変化する。また、型枠に吸着されやすい成分が吸着され、有効成分が薄くなっている。更に。微粉状のコンクリート成分が混入している。

(2)成型、養生関係

Q

1.ある(振動)成型条件で製品を充填・養生・脱型した。その時の離型剤の効果をどのように判定するか 離型性不良(離型過剰)の場合→離型剤の働きが過剰にでている →離型剤による硬化不良付着の発生それに伴う表面気泡の発生、油しみの発生→離型剤過剰塗布分を取り除く。又は離型剤をより薄く塗布する。より離型性の弱い添加剤の少ないタイプの離型剤を検討する。

離型性不良(離型不足)の場合→離型剤の効果が不足しているか、現在設定している振動等の成型条件が過剰で離型剤の対応範囲を超える場合→離型不足、型付着が発生する→離型剤をより強いものを検討するか、離型剤の適用できる状態まで、必要あれば、コンクリートの流動性を改良して、充填しやすい配合を検討し、振動成型条件等を緩くする。それでも解決できない時は、養生条件の再検討とか、その他の全体的な見直しをする。離型剤に各社いろいろあるが、離型剤の持つ力の限界を超えた時は、大差ない。何でもかでも解決するような力は、見込めない。

離型性良好で製品仕上がりが満足な場合→設定条件は合格適合している。更に良くならないか, 次の検討課題に挑戦できる。

離型性良好で製品仕上がりが不満足な場合→全体の設定条件が不充分である。離型性は良いが表面気泡、シミ、その他の製品仕上がりが不満足→表面気泡、油しみ対策の項
2.振動成型機の取り付け場所・取り付け方法の影響は 表面気泡、油しみ、雲のようなまだら模様の出現、離型不足、型付着等に影響力がある。
3.養生不足(表面強度不足)が及ぼす離型効果への影響は 型枠への付着(軟付着、スポット付着)
仕上がり表面(まだら模様、色が黒い、油しみが目立つ)
4.養生過剰が及ぼす離型効果への影響は 型枠表面の離型剤がコンクリート内部に吸い込まれ、ついには離型剤の潤滑効果が失われるにいたり、脱型が難しくなるときがある。その段階前では離型性良好、コンクリート仕上がり面の色は白いし、油しみも殆ど無くなるか、目立たない。

(3)脱型時の問題、型枠

Q

1.脱型し難い 型枠とコンクリートが密着して滑りにくい。→(離型剤を少し厚く塗る。)(脱型前に型をあたためる。)(養生を加減する。)(離型剤を潤滑油分の多いものに変更する。)
2.脱型時製品の角面が破損する ・型枠のテーパがきつすぎるとき→型を削る等調節、脱型方向を水平を保つ
・離型不足→ 離型剤のより潤滑効果の強いもの極端にはグリースや溶剤タイプの離型剤を検討する。
3.型枠に硬い付着物が出るく ・離型剤に起因している場合(塗布量不足→塗布量を加減する。離型力不足→離型力の強いものを検討する。離型剤の粘度不足→粘度を上げる。型に油を塗ってからの放置時間が長い→たれに強いタイプを検討する。)
・振動成型条件に起因している場合(振動成型条件が過大→加減する。)
4.型枠に軟らかい付着物が出る ・離型剤に起因する→(過剰塗布→適量塗布)(離型力過剰→弱いもの検討)(粘度があり過ぎ→低粘度品検討)
・養生に起因する→(製品表面強度不足)(気候による養生不足→早強セメントの使用等配合の変更等)
・急激な養生(型枠の温度上昇)による表面気泡移動に伴う表面破壊→前置時間・養生条件の検討
5.自動ラインで付着物が残り過ぎる。 (離型剤塗布量が多すぎる→加減する)(離型剤の化学反応性が強すぎる→低いものを検討する)(離型剤中の消泡剤等添加材料が多すぎる→よりシンプルなものを検討)(物理型の離型剤の検討)
6.軟らかい付着物はどうしてできるか 離型剤に起因する場合:型枠上に塗布された離型剤とコンクリート成分が反応或いは吸着しあって表面上で硬化遅延が起り、表面強度の弱い層が生成する。離型剤を必要以上に過剰塗布したとき、起りやすい。
7.型が錆びる ・型の黒皮が無くなっている→(型の再生)(防錆性の強い離型剤を検討する)(水滴等錆の発生しやすい環境を改良する)
(・水性の錆びの発生しやすい離型剤を使用している→錆びに強いタイプに代える。時々油性離型剤の使用をはさむ)

(4)コンクリート製品表面

Q

1.製品表面・脱型型枠表面上の軟らかい粉成分は何か 離型剤中の成分とセメントアルカリとの反応生成物(脂肪酸の金属石鹸)或いは吸着生成物、骨材中の微粒子分、微細な砂、泥、セメント、離型剤成分等の混合物質
2.製品表面の型枠を隠すセメントペーストが型枠に取られる。どうして。 ・離型剤の離型力過剰に起因するとき(離型剤の過剰塗布→塗布量を少なく、薄くする。)(離型剤が強すぎる→弱いものに代える)
・離型剤の離型性不足に起因するとき(離型剤の離型力を強める、水溶性であれば水希釈倍率を落としてより濃い目で使う。油性であれば強いタイプを検討するか、厚めに塗布するか、離型力の強いものに変えるか、単に粘度の高いものを検討する
・表面強度不足の場合は養生条件の検討・早強セメント配合の検討を行う。)
3.表面気泡が多い ・離型剤に起因する場合(消泡性が不足→消泡性の良いもの、消泡剤の添加)
・コンクリートに起因する場合(混和剤を変更したため、従来の離型剤では気泡が抑えられない。混和剤等配合の変更があった→混和剤にあった離型剤の使用。)
・コンクリートの充填不良に起因する場合→成型方法検討
4.表面の色が暗い ・混和剤との相性(離型剤を代えると良くなることがある)
・離型剤に起因するとき(離型剤が強すぎる→弱いタイプに代える)(塗りすぎ→適当量を塗る)
・養生に起因するとき(不足→加減する)
・骨材中の不純物(離型剤では対応できない)
5.表面に油のしみが出る ・離型剤に起因する(過剰塗布→塗布量を加減する。垂れ落ちた油分は除く)(離型剤が強すぎる→離型性の弱いものを検討する。)
・屋外使用で離型剤を塗布した型枠に紫外線があたり、離型剤が変化した→紫外線対応型離型剤の選択)
6.10mm位の表面気泡がある。離型剤で対応できるか 水性離型剤でカバーできるときもあるが、皮膜が弱いから、剥落しやすい。離型剤が表面気泡をカバーできる限界かも。離型剤以外の再検討( 成型条件を検討して、充填をよくするか、コンクリート調合条件を検討して解決する。等)
7.油泡とは 離型剤が型枠の下部に垂れ落ちて、振動成型時立ち上がってくるとき、微細なものから3mmくらいのまるい気泡の群れが沢山観察されるときがある。このような空隙(離型剤の油滴跡)を油泡と言っている。
8.油泡を消すためには如何すればよいか (垂れ落ちた過剰の油をできる限りふき取る。)(離型剤を再検討する。)
9.表面の鉛直方向の筋状のしみ 振動バイブの強く当たったところや鉄筋に添ってでている。(離型剤では限界がある。)

(5)その他

Q

1.白華現象を抑えることができるか 気候が低温になると出やすい。雨に当たるとでやすい。(離型剤の種類によって、若干の出方の差があるが、抑えることは不可能、コンクリート本体を防水性に変えるとか、対応をすれば可能と考えるが、離型剤皮膜では、成型充填させるためには、潤滑効果が必須の要素であり、コンクリートとぬれた状態で接しているため、離型剤で表面を防水性にすることは現段階では不可の段階にある。
(次のような特許がありました。コンクリートの白華(エフロレッセンス)を防止する方法 特許2827090、特開平8ー208301(サンプレス四国、益田氏))
2.製品養生中のしみ 養生不足、脱型直後の降雨、気温の低下、養生場所等何らかの要因で起きている。離型剤だけで万能的に解決できない問題。
3.コンクリート材料と離型剤と相性があるか ある。アルミナセメントの場合は、金属石鹸タイプの方が良さそうだ。
4.混和剤と離型剤と相性があるか ある。気泡に対する影響、コンクリートの仕上がりの色の変化等影響が顕著に現れる。離型性も変わる。
5.骨材と離型剤と相性があるか ある種の反応性に富む骨材は、化学反応型の離型剤の成分が濃い場合、あるいは塗りすぎた場合、しみになりやす場合がある。出来る限り、薄く塗布することで避ける。または、水溶性離型剤を検討する。
5.成型条件と離型剤と相性があるか ある。
5.製品の仕上がりに離型剤の塗布の状態は関係があるか、どのように塗っても、良いか 仕上がりに影響がある。離型剤は最低必要量を塗布する。


12.製品製造時の不具合の現象

(1)不具合の現象は製造のどの段階でどのように現れるか?

・脱型操作の段階→脱型は容易かどうか(脱型性、作業性、製品の破損)
・脱型した製品の仕上がり表面状態→良好か不具合ありか(・コンクリート製品の仕上がり面の油しみ、変色、表面気泡)
・脱型したあとの型枠の状態→型枠に残存する付着物は少ないか不具合か(型枠上のコンクリート付着物の大小、硬軟、清掃の難易、作業性等 )

       以上3つの段階で観察されるときが多い。

(2)不具合が発生した原因はなにか

・日常的に度々起きていることであれば、すぐわかりますが、普段は起きない事例が起きると、原因究明は大変厄介な問題です。
・製造の前段階から製品出荷までの間の何らかの原因を即、判断するにどのようにしたら良いのでしょうか?

(3)不具合の対策は如何に対処すればいいか?

 
・どのような不具合の現象がみられるか     
・その原因は何か      
・その原因の更に細かい究明を試み      
・それぞれの原因ー結果の関係を改良できるような対応策を提案する。

       以上の段階に沿って、次項目5.6.7.8.にコンクリート製造工程における不具合解決のための対応策一案を表記しました。 
 

13.脱型不良に対する対策

・脱型操作の段階→脱型は容易かどうか(脱型性、作業性、製品の破損)

不具合の現象

原因

原因の究明

対策
脱型不良
(脱型しにくい。)
(型にコンクリートが付着する。)
(型に取られる)
(破損する。)
離型剤 塗り残しがある 型枠面に均一に塗布する
塗布量が不足している 離型剤の適当量を塗布する
離型力が不足している 離型剤を少し厚くぬる。
より強い離型剤を検討する
養生 不足(軟かい付着物が多いとき) 養生条件を見直す
過剰である(脱型が困難なとき) 養生条件を見直す
油切れが起きている 振動成型条件がきつい 成型方法(振幅、サイクル、時間 等 )を調節する
コンクリート充填までの放置時間が長い 再塗布する
 離型剤を変更する
型枠温度が高い できる限り冷やす


14.型枠付着物に対する対策

・脱型したあとの型枠の状態→型枠に残存する付着物は少ないか(型枠上のコンクリート付着物の大小、硬軟、清掃の難易、作業性等 )

不具合の現象

原因

原因の究明

対策
型枠に付着物が多い
硬い付着物がある 型枠の掃除が不足している 型枠の掃除を行う
養生過剰で離型剤がコンクリート内部に吸収され、潤滑効果が不足ないしは無くなった 少し養生を緩くする
離型剤の取扱が不適当である(塗り残し、塗布量不足、離型力不足のものを使用) 脱型不良 離型剤の欄 参照
油切れが起きている 脱型不良 油切れの欄 参照
軟らかい付着物 型枠掃除不足で堆積した 型枠の掃除を行う
表面強度が不足している 養生を充分行う
離型剤のかけすぎである 許す限り薄くぬる。過剰分は除く。
離型剤が強すぎる 離型性のより弱いものを検討する。

 

15.製品仕上がり面の表面気泡対策

・脱型した製品の仕上がり表面状態は良好か、それとも不具合があるか。
・コンクリート製品の仕上がり面の表面気泡はどうか。
・脱型直後、表面気泡は目立たないが、養生していると、かくれ気泡がでてくることはないか。       

不具合の現象

現象

原因の究明

対策
脱型直後の表面の気泡(空隙)が多い
下部に集中して丸い小さい空隙(油泡)がある 離型剤の全酸価か粘度のいずれかが高すぎる 低酸価又は低粘度のものを選ぶ
離型剤の塗りすぎである。 適当量を塗布する.ごく薄塗りにする
過剰塗布分を除く。
比較的小さい空隙(空気泡あと)が多い コンクリート表面の気泡を被うセメントペーストが型枠に取られているとき、離型剤が弱すぎる。 離型剤の希釈倍率を下げて濃くする。
離型性の強いものにかえる。
離型剤を厚く塗る。
ペーストがコンクリート表面に残っているとき、離型剤の消泡力が不足している。 消泡性の強い離型剤に代える。
消泡剤を添加または増量する。
養生が早すぎる できる限り前養生を充分する
少し大きい空隙(空気泡あと)が多い。 コンクリートの振動成型が不十分である。 成型条件を検討する。
コンクリートの流動性が小さ過ぎる。 流動性を良くする。
配合の再検討を行う。
消泡剤の検討(添加するか、その種類を選びなおすか)
脱型直後、気泡は目立たないが、養生を行っていくと、かくれ気泡が出てくる製品表面のかくれ気泡を覆っているセメントペースト部分が剥落して,表面気泡を発生する。離型剤の消泡力がフレッシュコンクリートの配合によって発生する表面気泡の消泡に強く対応している。
コンクリート製品表面の気泡は、離型剤の油性が強ければ強いほど、表面に丸い気泡が発生する傾向がある。
離型剤の水溶性が適度に強い時、表面の気泡をコンクリートの製品表面に入れて、表面の気泡が消えたかのように見える。
製品表面のかくれ気泡を覆っているセメントペースト部分の強度が弱く、剥落して,表面気泡を発生する。
空隙部分が大きければ大きいほど空隙が現れやすい。
離型剤を必要最低限に、薄く塗る(過剰塗布を避ける。小面積部分でふき取ってみるテストも行ってみる。)
離型剤の消泡性を妥協できる限界まで、低下させたものを検討する。
混和剤で表面の一番固く仕上がる系統のものを選択する。
離型剤で一番堅く仕上がるものを選ぶ。
(解決の可能性---成型方法の検討・変更、コンクリートの配合の変更、混和剤の変更等で、表面構造がより密になり、表面の気泡周辺の強度が強くなるかどうか、或いは、泡をコンクリートのより内部へ封じ込められるかどうか、コンクリートの面からの挑戦と離型剤の更なる改良から更なる改良へと永遠の開発努力目標であると考えます。)

16.製品のしみに対する対策


・コンクリート製品の仕上がり面に、離型剤に起因すると思われる油汚れ・しみ・紫外線の影響等は観察されないか?

不具合の現象

現象

原因の究明

対策
表面のしみが目立つ。変色している。
油の上昇した後が見える。 離型剤の過剰塗布 均一に薄く塗る
全体が暗い色に仕上がる。 離型剤が強すぎる 離型性の弱いものを選らぶ
コンクリートがプレーンである 混和剤を導入する
混和剤が適当でない 混和剤の明るく仕上がるものに変更する
離型剤が屋外で日焼けして変質、油しみ発生した。 紫外線で離型剤が化学変化を受けた。 紫外線に強い離型剤を使う
屋内で製造する。
日光を遮断する。

17.コンクリート離型剤の品質管理

各社各様。潤滑油の試験に応じて一般性状測定を行っている。 必要に応じてコンクリートの打ち込みテストを行う。
試験項目 JIS該当番号その他参考資料
外観 目視で判定する
密度 JIS Kー2249 密度試験方法
動粘度  JIS Kー2283 動粘度試験方法
引火点 JIS K−2265 引火点試験方法
色相 JIS K−2650 ASTM色試験方法
流動点 JIS K−2269 流動点試験方法
凝固点(融点) 凝固又は融解する温度を測定する
pH JIS Z−8802 pH試験方法
溶解性 水又は有機溶剤に対する溶解性を調べる
全酸価 JIS K−2501 中和価試験方法(全酸価試験)
銅板腐食 JIS Kー2513 銅版腐食試験方法
反応 JIS K−2252 反応試験方法
鉄板腐食テスト SPC、熱間圧延鋼板を使って,必要期間浸漬テスト、浸漬後暴露テスト等を行う

18.潤滑油(例:離型剤)の粘度変化計算方法

項目 概要
一つの油の違う温度での動粘度の推定方法 40℃と100℃の動粘度を測定し、油化学協会が販売している粘度ー温度曲線のグラフ用紙に、測定値を書き込み、他の温度の値を推定する。
2種以上の潤滑油を混合した時の動粘度の推定方法 実測する。40℃と100℃を測定し、粘度ー温度曲線のグラフ用紙に、測定値を書き込み、他の温度の値を推定する
2種類の潤滑油を混合した時の粘度推定方法 潤滑油協会 参考文献(JISハンドブック No.25石油編)
潤滑油の混合と粘度の求めかた(参照) 
1. 簡易式のブレンドチャートを使用する場合
2.JISK2283付属書1,3.3を使用する場合
3.潤滑油のJISの粘度測定方法中に記載されている連立方程式を解いて、粘度の推定を行う。
2種類以上の潤滑油を混合した時の粘度推定方法 潤滑油のJISの粘度測定方法中に記載されている連立方程式を解いて、粘度の推定を行う場合、3種、4種それ以上になると記載されていないので、自分で連立方程式を立て、それらの総和を求めると動粘度の近似値が得られた。(思考の過程で、極端な油の組み合わせを考えて組み合わせを種々変更でき、大変役に立ち。かつ、配合処方の組み立てを行なうとき、従来の何倍も能率が上がった。少し配合処方をいじるだけで、目的の粘度が得られた。)邪道であるが、添加剤等の潤滑油以外のものを同様にして計算すると、全体の混合油の計算値が実際の測定値とずれた。外れた場合に、係数1.1から1.3の値を乗ずると、同系列の配合系では、実際に測定した値に近い値が、推定が出来る場合が多々あった。各種の油剤の配合系での大雑把な混合粘度の推定に有効な手段として用いることが出来た。(自分にとっては、粘度調節が苦にならなくなったし、大いなる技術進歩でした。)

(フリーソフトとして、参考にして下さい。)
☆エクセルオンライン動粘度計算1.(web上で計算可能):
2種以上の潤滑油を混合した時の動粘度の予測方法
異種の動粘度の油を混ぜて目的の粘度の油を作る配合割合の算出予測方法


エクセルで作った「 油の粘度計算試表 1 」


☆エクセルオンライン動粘度計算2.(web上で計算可能):潤滑油・離型剤等の(動粘度ー温度変化)予測

エクセルで作った「 油の粘度計算試表 2 」


19.コンクリート離型剤の分析方法

 
試験項目 概要
一般性状テスト 粘度、引火点、密度、色相、全酸価等を品質管理テストと同様に行う
蒸留テスト 常圧で蒸留を行って、ある温度からある温度までの留分の量を定量する
赤外線吸収スペクトルをとる。 構成成分の概略の構成を見る。現在では、有機物に限らず、無機物も、KBR錠剤法でIRチャート図をとることが出来るので、無機物の構成化合物の成分推定にも赤外分光分析法は、有効に使えるときが大いにある。
潤滑油分の分析 環分析を行って、離型剤成分中の潤滑油分がパラフィン系かナフテン系か芳香族系かを分析する
カラムクロマト分離テスト アルミナもしくはシリカゲルを充填剤とてカラムクロマト分離を行い、各成分の定量を行う。それぞれのIRチャートを測定し、成分推定をする。古い手法であるが、有効な方法である。
ガスクロ分析 カラムクロマトで分離した脂肪酸分はメチルエステルとし、ガスクロで分離定量する。ロジン分は普通のエステル化反応ではメチルエステル化できない。ジアゾメタンの方法でエステル化を行う。ジアゾメタンガスは喘息になるので厳重な注意の下に使用する。
離型剤成分の骨格推定 それぞれの分析値をつき合わせて、説明のできる骨格を構築する。ひとつの方法で分析すれば、ひとつの試験結果が出てくる。分析の方法を変えて試験すれば、また異なる試験結果が出る場合がある。これらの結果を、よく説明できる(アーフヘ−ベンできる)分析結果が得られれば、それがより正しい結果と推定できる。

離型剤は、簡単に分析できるときもあれば、分析するたびに、異なると思われる系統の化合物が出てくるような場合もある。ひとつの分析結果にとらわれると、エラーをおかす場合がある。

成分分析は、分析自体が目的ではない。得られた結果がいい加減な分析結果の場合は、目的の分析物の性能を発揮できる物質を把握できていない場合が大いにある。

離型剤は、特に微量の助剤で離型性の相乗効果を出している場合が常道であり、多量の主剤の陰に隠れて、微量成分は大抵の場合は分析できない。把握できない場合が多いから、分析結果は、「分析できた物質に対しては、ここまでは正確に分析できた」と評価できる分析の限界線を引いて考慮すべきである。

分析対象物と同じ傾向の離型効果を出しうる分析結果が得られれば、分析結果は良とし、「50%以上目的物の分析は出来たな」と万々歳の気持ちで、正しい骨格を推定する思考を行うことが大切である。

分析結果は、次のコンクリート打ち込みテストで、トライアルアンドエラー(試行錯誤)する第一段階の出発点であり、何回も試行錯誤して、目的の性能以上の効果が得られるよう実験を繰り返して、処方をつくりあげる。
テスト配合を組む コンクリートを打ち込み、離型剤の効果を分析品と比較して、同等の効果もしくはそれ以上のものを構築する。トライアルアンドエラーの繰り返し。
水溶性の離型剤の場合の分析方法 界面活性剤と場合によっては水が含まれているので、水分を除いて成分分析すると分析が容易となる。以下のように行う。
  • (1)石油製品のJISの水分定量方法・蒸留法(キシレン使用)を変形してベンゼンートルエンの混合液を使用し、共沸により含有水分を除去する。
  • (2)赤外をとって大まかな成分の構成物質を推定する
  • (3)カラムクロマトで成分を分析し、赤外で成分を推定する。
  • (4)脱水した残りの成分の界面活性剤の定性テストを行う。
  • (5)脱水した残りの成分の定性テストを行い、界面活性剤の種類の推定の幅を狭く限定する。
    (元素定性テスト方法概要:金属ナトリウムを使って、窒素、イオウ、リンの定性テストを行う。塩素はバイルシュタインテスト。無機物の含有は燃焼テストで残渣の有無を調べる。)

以上の分析で含水状態のサンプルを熱分解の可能性のきわめて低い状態で脱水できて、油性の分析と同じ工程で分析できる。
界面活性剤の定性分析法
→(基本的な考え方)
陰イオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、その他必要なれば両性イオン系、カチオン系界面活性剤の定性反応を行う。
  • 陰イオン系(LAS,SAS,α−オレフィンスルフォネート、燐酸系の検出反応):メチレンブルー法
  • 石鹸系:石鹸は水溶液中では、脂肪酸カリウム、あるいは脂肪酸ナトリウム、脂肪酸トリエタノールアミン塩等で存在する。液を塩酸酸性にして石鹸を破壊し、脂肪酸とすると油分が上に浮いてくる。分離して赤外で脂肪酸を確認し、酸価を測定して脂肪酸を推定する。脂肪酸は、さらに、適当な方法でメチルエステル化して、ガスクロで成分を分析確認する。
  • 非イオン系(エチレンオキシド、プロピレンオキシドを含む非イオンの検出反応):コバルトチオシアネート法とヨウ化カリ法を必要に応じて併用する。
  • 両性界面活性剤:陰イオン系界面活性剤の定性反応(メチレンブルー法)で、水酸化ナトリウムを入れて定性反応を行うと、両性イオンが陰イオンになり、クロロフォルム層が呈色する。
  • 陽イオン系界面活性剤:陰イオンの検出のための呈色反応を使う。
    (1)メチレンブルー液を試験管に入れ、半量のクロロホルムを入れてよく振り混ぜる。
    (2)ついで、ラウリル硫酸ソーダもしくはオクチルスルフォコハク酸ナトリウムの1%液を少量入れて、よく振り混ぜる。
    (3)水層とクロロフォルム層をほぼ同じ色になるまで、陰イオンの1%液を入れる。
    (4)試験液を入れて、クロロフォルム層の色が薄くなればカチオンの存在が予想される。

●界面活性剤の定性反応は、種類によっても定性反応を示す強さが異なり、また。定性反応を行うときの液中の濃度にも関係するので、定性反応が陰性のときは、場合によっては液を濃縮して再テストを行って見ることも必要である。濃度が検出限界以下では、陰性である場合もあることを認識しておく必要がある。

    20.油剤の概算粘度推定方法

    油剤(例えばコンクリート離型剤)の配合テストを行う時に、大体の配合を組んで、どの程度の粘度のものが出来るかあらかじめ推定すると、仕事の効率が何倍にも上がる。模擬的な一定の動粘度の配合をいろいろ組んで、現行の配合設計を変更することが出来る。ベースオイル・添加剤の種類や配合量・系の動粘度を変えた配合表も直ぐ作れる。今までの経験から大体の予想を頭の中で実験する。その中で系統的に顕著に違う配合のものを代表選手として選んでテストすることが出来る。そこから今までより改良された処方が生まれる。慣れると、随分と役に立ちます。

    自己流であるが、7.推定粘度計算の方法を利用して、添加剤もその中に入れ込んだ計算表を作る。各種添加剤の40℃と100℃の粘度を測定しておく。そして、計算した結果と、実際に測定した結果を比較して、どの程度整合しているか、比較する。

    固体の成分の場合、潤滑油に溶解できれば、潤滑油の溶液を作り、一般の潤滑油と同じように40℃、100℃の動粘度を測定して推定粘度計算することが出来る。溶液に出来ない時は、計算対象から外して、残りの計算できる系と実際の混合粘度との数値関係から、配合の推定粘度を、荒っぽく推定する。
    最終的に言えることは、実測値と計算値のずれを、ファクター1.1とか1.15,1.20,1.25等を計算値に乗じて補う。成分の系統により癖があり、大体の推定値を得ることも可能である。溶解度等の問題もあり使えない場合も有る。     

    21.コンクリート離型剤の実験方法

    実験室的方法 1.小さなテスト型枠を用いる
    2.型枠を清掃する
    3.離型剤を塗布して、テーブルバイブレーター上(もしくは別の成型条件下)に置く
    4.何分か放置した後で
    5.所定のコンクリート配合でコンクリートを練る
    6.コンクリートを二回か三回に分けて注入し、テーブルバイブを所定の時間かける
    7.打ち込み終了後表面をならす。
    8.表面が蒸発しないように、ラップをかける
    9.所定の時間放置する
    10.必要に応じて蒸気養生する
    11.型枠を脱型する
    12.脱型のしやすさ・型枠面へのコンクリート付着の状況・コンクリート表面の仕上がり状態(表面気泡・色)を観察する
    13.コンクリートの表面の色変化等経時変化を観察する
    14. できる限り,コンクリート製造現場に近い仕上がりが再現される実験室的製造条件を探し、設定する。コンクリートの配合は現場の配合に近い条件で練る。もちろん混和剤は同じものを同量使用する
    15.1回目よりも更に現場に近い条件を設定し直し
    16.再度コンクリートの打ち込みテストを行う
    17.現場で使用されているものよりいい結果の得られた離型剤を選択し、テスト品の候補とする
    18.繰り返し、同じテストをして、コンクリートの積層の有無を調べる<積層の起らないものをテスト品とする
    19.テスト品候補の製品安定性等(原料事情は大丈夫か、製造可能か、品質は安定するか、経済性はどうか、夏季、冬季の安定性は大丈夫か)を確認する
    現場テスト 今までに使われている離型剤と比較して、離型性は実験室的には同等以上と確認した試作品をテストする
    性能が不十分であれば、更に実験室的方法に即座に戻り、再検討する
    性能が改良が見込めそうであれば,数日から数週間の実地テストを続ける。のろの積層がなければ、或いは改良されれば、テスト結果は良とする。
    ずっと以前に水溶性の離型剤は、使用しても良くなかったから、今もずっと使わないのだという考え方の傾向があれば、日進月歩のこの時代です。再検討をお勧めします。

    22.コンクリート離型剤の製造方法

    一般の化学品製造業と同様特に変わったことはない。ただ違う所は、石油系の潤滑油を多量に使用するので、貯蔵や製造に大して危険物に対する取扱に注意を要する。製造している製品に対しては、ユーザーの要望がかなり厳しく、メーカーはそれに対応するために、少量多品種の製造を行っている。       
    製造品目 概要
    一般油性離型剤 加温ができる溶解釜に原材料を所定量計量して入れる
    原料の一部の高沸点の潤滑油分を入れて、加温溶解する
    残りの潤滑油分を所定量いれて、一定時間撹拌後、出来上がりとする
    品質管理チェック後、充填して製品化する
    水溶性離型剤 加温ができる溶解釜に原材料を所定量計量して入れる
    加温溶解する
    撹拌しながら、温水(または熱水)を入れる
    安定な乳化液が得られたら、残量の水を冷水で調節して一定量とする
    場合によっては、40℃近辺まで冷却する
    品質管理チェック後、充填して製品化する
    特殊品の離型剤 目的に応じた製造方法を工夫・確立・選択する
    (高粘度品、ゲル化商品、極低粘度品、溶剤希釈品、W/Oタイプ乳化品その他)


    23. 新たな知見との出会い


    あとがき 離型剤関連情報一部抜粋しました。
    ★離型剤
       コンクリート離型剤は、境界面の化学で、研究者、技術者の少ない範疇の技術分野です。
    このホームページの内容も客観的に正しいかどうか大いに議論して、さらに正しくレベルアップされるための一つの刺激になれば幸いです。離型剤・剥離剤について、言葉と経験を更に豊かにするためのツールとして、HP上で関連する基本用語、先人の経験、技術情報・化学情報・企業業界情報等を集めました。

    ★離型剤についての発表会・議論・討論
       現実の離型剤の業界の発展は、離型剤メーカーの自家努力、コンクリートメーカーとの共同開発に依存されています。日常的に遭遇するいろいろな問題・クレームに対する解釈も、歴史は古いが理論づけは、発展段階にあります。組織で創り出した伝統知識と技術がベテランの世代から新しい世代へ受け継がれています。どこまで客観的に正しく、理解され継承されているのでしょうか。土木・建築と化学の境界線上の極めて実務的な離型剤の姿は、簡単そうで捉えにくいのが実情です。そして、毎日出くわす日常の大切な仕事の一環なのに、学会や学術雑誌では離型剤についての討論や議論は少ないか、殆ど見当たらないのも実情です。
    ★クレームと解決方法の出会い
      「もっといい出会いがあったら」という実例をあげます。コンクリートメーカーが苦労していたクレームの実例として、一つの特許を見つけました。「いま使用している離型剤で型付着という解決できない不具合を発生している。その際発生する不具合品を原材料の一部としてリサイクル再利用する。」という例です。離型剤の改良は、長い間、徹底的には改良されずに、経過したようです。その特許から、次のようなことを感じました。
       これは多分、不具合品の再利用ということの影に、「コンクリートメーカーが新製品を開発するとき、離型剤は現在使用しているもの位しかない、あるいは、一番良いのだと判断したのか」或いは「離型剤メーカーに相談したら、離型剤の改良が出来なかったのか。」などと推定できます。また、もし「このとき、離型剤自体を更に開発・改良・応用できる出会いがコンクリートメーカーにあったなら、製造の工程もその当時から、大幅に短縮され、スピードアップされていたかもしれないという体験をしました。
        また別の出会いの例として、「あるところでは、普通ではやらないような塗布方法(特殊離型剤の強・弱二品を一面に使い分けて使用する方法)で使用したところ、型枠掃除(けれんの工程)がずいぶんと楽に、簡単になりました。」建築部材の生産工程(打ち込み型枠の方法)の仕事がずいぶん楽になったと、喜ばれたことがあります。


    ★現在とmirai 情報を生かそう
        一年前インターネットの離型剤のホームページと今年のホームページの記事件数を検索した結果を比べると随分増えてきました。発展の凄さが実感されます。インターネットの普及で、どんなに世界が違う分野でもアプローチすれば簡単にニュースが入ってきます。特許でも文献でも、何ヶ月もかかって入手していた時代から、FAXでその日に、ある場合には、無料で情報が入手できます。それだけに、変化に自分自身を対応させる努力は、いままで以上に要求され、より良く生き延びるために、もっと厳しい努力が必要とされます。幸せなことに、本当に素晴らしいインターネットサイトを毎日発見できます。見るだけで、自分自身の考え方が広がっていきます。刺激の中で、毎日の仕事を日々着実にこなしていけば、当然過去の自分とは全くスケールの違う自分になるはずです。

        コンクリート離型剤の世界も見方を変えて、土木・建築の世界の考えと化学の世界の考えのとの 出会いが頻繁になり、離型剤の研究・生産活動と、ユーザーの研究・消費活動の情報的な分離がより一段と高度に再結合(=流通)されれば、更に発展すると考えます。
    ジャンル 新たな知見を求めて 備考
    離型剤
    コンクリート離型剤等
    参考ウェブサイト
    コンクリート離型剤
    ホームページ調査
    Biodegradable Lubricant Materials
    Rubber Mold Compounds & Plastics. Rubber Mold Compounds and Plastics Technology
    (Nicholas J. Sarra, Distributor and Consultant for all Manufacturing, Mold and Model Makers, and Casters.)
    Mold Release Agents For use in all industries( Nicholas J. Sarra Distributor and Consultant)
    The highest quality panel products in the world(Olympic Panel Products formerly Simpson) Olympic Panel Products
    How To:Obtaining Predictable Concrete Finishes, Achieving Architectural Finishes , Planning Forms to Assure Results
    CONCRETE FORMING Frequently Asked Questions

    【トップ】