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2.4 国の食品規制基準100[Bq/kg]

【問題5】国の食品規制の基準値100[Bq/kg]の米100gを食べると放射性のセシウム原子は何個身体に入るか。
ただし、セシウムは55Cs137として計算する。
55Cs137の半減期 T = 30年と崩壊定数 λとの関係は

国の規制基準で体内に入る放射性セシウムの量

崩壊定数λ=(1/ T)*loge2

-(1/N)*dN/dt*λ

身体に入るセシウム原子 136億5000万個のうち毎秒10個の原子が崩壊しベータ線を出しているのだ。
cf.『原発事故 そのときあなたは!』 瀬尾健著 風媒社 p.132

【問題6】食べ物の放射能に関する新しい摂取規制の基準値でどれだけの細胞が放射線を受けるのか

食べ物の放射能に関する新しい摂取規制の基準値100[Bq/kg]

食べ物の放射能に関する国の基準が2012年10月に500[Bq/kg]から100[Bq/kg]に変わったが、その後国は基準を変えていません。
新しい基準の米100g食べたとき毎秒何個の細胞が放射線を受けることになるか計算してみよう。
チェルノブイリの事故ではだんだん規制を厳しくしていますが、十年以上経ってもこの基準のままでは問題ではないでしょうか。
55Cs13756Ba137 + β- + γ + γ
520keV 605keV 795keV

米100gの放射能は( )[Bq]

  1. ベータ線の体内中の飛程を5mmとすると、その間には( )個の細胞がある。
    したがって、放射能1[Bq]毎に(  )個の細胞が被曝をする。
    10[Bq]ベータ線で( )個の細胞が被曝する。
  2. 次にガンマ線の被曝について考えよう。
    ガンマ線の放出は605[keV]と795[keV]2種類あるが、
    体内の吸収率を50%と考えれば700[keV]のガンマ線一種類を飛程20cmで考えてもよいだろう。
    この飛程には( )個の細胞があり、
    10[Bq]のガンマ線により、( )個の細胞が被曝すると推定していいのではないか。さらにバイスタンダー効果を考えればもっと多くして考えるべきだ。
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【問題7】食べ物の放射能に関する新しい摂取規制の基準値(発展学習)
2012年10月からの食べ物の放射能に関する新しい摂取規制の基準値は100[Bq/kg]となった。主食の基準はもっと下げるべきである。
この基準の米を毎食100gずつ食べた場合、55Cs137のベータ線による内部被曝がどのように変化するか考えてみよう。

内部被曝等量線量

ここで計算に必要なデータを次のように仮定する。
一日あたり米による放射能の摂取はすべて55Cs137によるものとする。
放射能の摂取量 A=100*0.1*3=30[Bq/日]
55Cs137の物理的半減期Tp年、体から排出される生物学的半減期Tb=100日
(他の本によると70日とか100日~150日と個人差があるようだ)とすると、
実効半減期は
Te=( )[日]となる。
体内の55Cs137の原子数Nは次の数式に従って崩壊をする。
ここで実効半減期Teと崩壊定数λeとの間には次の関係が成り立つ。

-(1/N)*dN/dt = λe + A・t

この数式を解き、初期条件をt=0のとき、N=0とすると、

N= (A/λe)・t- (A/λe2)・{1 - exp(-λet)}

したがって体内の55Cs137による内部被曝量は次の式に従う。
dN/dt =(A/λe){1 - exp(-λet)}
これを実効半減期Teを使って表現すると
dN/dt = (Te*A/ loge2){1-(1/2)t/Te}
ここに実効半減期Te = 99.095日とt = 365日とloge2の数値を代入すると
1年後の被曝線量率は

dN/dt = 3647[]Bq]
なお、この条件で米を食べ続けたとき1年間に体内にたまる55Cs137の原子数は
N =(A/λe)t - (A/λe2)・{1 - exp(-λet)}
実効半減期Teを使って表現すると
N = (Te*A/ loge2)×t-(Te/ loge2)2*A{1 -(1/2)t/Te}

ここに実効半減期Te = 99.095日とt = 365日とloge2の数値を代入すると
N = 1.35*1011
この数は1年間に体内にある55Cs137原子の崩壊総数でもある。
ここで、被曝者の体重を60[kg]として1年間の被曝線量当量を求めよう。
55Cs137の放射能1[Bq]当たりのエネルギーε = 0.52[MeV]であるから
被曝線量当量 = 0.52*106*1.35*1011*1.6*10-19÷60[Sv/kg・年]
= 1.875*1040[Sv/kg・年]
= 0.1875[mSv/kg・年]
cf. 『放射線のはなし』野口邦和著 新日本出版社 p.67 風呂桶理論

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