訓練の素質


犬の性格が、個体によって違うことはいうまでもないことです。

訓練は、当然それぞれの個性に応じた手段や方法をもって行わなければなりません。

犬の性格を大別すると次のとおりです。

感受性

硬性 軟性 鋭敏 過敏 鈍感

大胆性

大胆 どう猛 臆病(シャイ)

  

知性

怜悧 愚鈍

   

服従性

従順 非従順

   

集中性

集中 散漫

   

順応性

順応 非順応

   

行動性

能動 過激 鈍重

  

これらのものが、いろいろ複合されて、個体の性格となるわけです。

感受性では、軟性なものは、刺激に負けやすく、

意欲を失いがちです。また、過激なものは、鋭すぎて

とかく刺激に影響されるし、鈍感なものは、感度が

鈍く記憶性もよくありません。

大胆性では、どう猛なものは過激で攻撃的で

危険であり、また臆病(シャイ)は、絶えずびくびくとした

不安な状態です。

知性では、愚鈍なものは判断力が鈍く記憶性もよくありません

服従性では、非服従なものは人の取扱いや指導に対して

素直に服従しません。

集中性では、散漫ものは、すべてにのみこみが悪く

意欲的では、ありません。

順応性では、非順応なものは、環境や条件が変わると

能力が減退します。

行動性では、過激なものは、行動が突発的乱暴で

また、鈍重なものは運動性が鈍く感度も良くありません。

以上のこれらのものは、訓練の素質としては望ましい

ものではなく、この反対に、硬性、鋭敏、大胆、怜悧

従順、集中、順応、能動という一連のものは、

硬性なものは不愉快な刺激や圧迫からすぐに

立ち直るし、鋭敏なものは、感度や記憶が良く

大胆なものは物事を恐れないで安定しているし

怜悧なものは、落ち着いて理解力に富み

従順なものは、素直に服従します。

集中性に優れたものは、意欲的で、持久性に富み

順応性に富んだものはいつ何処でも

充分にその能力を発揮することができます。

能動的なものは、運動性や反応に富んでいるものです。

これらは、訓練に絶対に必要なよい素質ですが

このよい条件が全部うまくそろっているという犬は

まず滅多にいないもので、ほとんどの犬は望ましくない

ものがいくつか混入複合しているものです。

望ましくないと思われるものの中には、

例えば、一見してシャイに見えるものが

実際には、馴致不足によるという例などが

ままあるもので、これなどは、順を追った合理的な

馴致によって、まもなく鋭敏で大胆なものになる場合も

多いのですから、あらゆる角度から観察すると同時に

充分に手を尽くさなければなりません。

ごく小さい幼犬では、これらの判断が困難な場合が

多いので、この個体ばかりでなく、その両親も観察して判断すべきです。