訓練の要則




  • 絶対的な愛情
  • 絶対的な愛情が必要なのは、当然の事ですが

    これも溺愛的であってはなりません。

    すなわち、あふれる愛情の中に厳格さがなくてはなりません。

    この愛情による正しい訓練は、犬にとって不幸な強制や

    束縛でなく、放縦な生活をもつ犬などには見られない

    主人に対する強い愛情、訓練に対する喜び、飽きる事の無い

    作業意欲など、無上の生きがいを生み出すものです。

    逆に愛情不足と行きすぎた強制訓練は、犬を萎縮させ絶えず

    人の顔色ばかりうかがう陰気な犬にしてしまいます。

    このような状態で、多少の服従をしたからといっも

    それは、真の訓練による服従とはいえません。

    また、将来性のないものです。

  • 常に同一の声符と視符
  • 犬は、人語を解かりません。

    犬が人の言葉によって服従行動するのは、言葉の中の

    アクセントと動作とを結び付けられ、同時に喜びを

    与えられる事を習慣ずけられるからです。言葉は短く

    調子のはっきりしたものでなくてはなりません。

    この命令に使う言葉を訓練では声符と呼んでいます。

    また、命令を与えるのには声符だけでなく

    それぞれの、定められたゼスチュアを併用したほうが

    犬にとっては、はるかに理解しやすいのです。

    この命令に使うゼスチュアを視符と呼んでいます。

    いつも違った声符や視符の使用は、犬を混乱させ

    よい成果を望む事はできません。

  • タイミンクの合った賞罰
  • 普通の犬の行動は、本能の要求するところに経験が

    プラスされて起きるのですが、その犬の行動を自然のままに

    させた場合には、人の生活や目的に反したものが、しばしば

    現れます。そこで飼い主や訓練者は、その行動に対して規制を

    加えなければなりません。

    すなわち、この行動はよく、この行動はいけないのだと、教え込む

    わけです。それには、タイミングの合った賞罰によるほかありません。

    行動から時間が経ってから、誉めたり、叱ったりしたのでは、

    犬には、通じません。ことにいけないことは、悪い行動のあとを

    後刻発見して、怒りのままに強く叱るなどのタイミングを失した

    懲罰は、犬の性格を暗いものにし、自分の行動に自信の持てない

    信頼の出来ない犬を作る事になります。必ず、その時、その場で

    賞罰を与える事です。この正しい賞罰履行の習慣によって、

    犬は、自分の行動の是非をしり、良い行動には喜びをもち

    悪い行動にすぐに改めるようになるものです。

    これが、正しい訓練を受けた犬の最も優れたところです。

    古くから訓練に「叱っても、怒るな!」という訓語があります。

    罰を与える場合には、必ず冷静な計算がなければならないという事です。

    また、このほかに、犬は三段論法的な推理の力を持っていないので

    人間的解釈から、それを犬に求めてはなりません。そのような事の

    無いように、充分に気を付けて下さい。

  • 飽きさせない事
  • 訓練には、犬の良好なコンディションから生まれる所の、しっかりとした

    気力、体力が必要です。しかしこの気力、体力にも限界があり、

    ことに初歩のうちほど持久性に乏しいものです。能力の限界を超えた

    訓練やトレーニングは、進歩どころか逆に退歩あるのみです。

    必ずそれぞれの、その時の能力、意欲の限界内で飽きないうちに

    留めなければいけません。それによって、初めて進歩があるのです。

    もし、現在犬が10の力を持っている場合に、訓練は8程度に留めます。

    すなわち、犬に2の力を残し、まだ訓練を欲しているうちに辞めるようにします。

    このようにしているうちに、犬の能力は、次第に強まり、まもなく12に上昇します。

    そこで今度は、訓練の程度を10に上げてよいのです。このように進めていくと

    犬の能力は渋滞や退歩する事無く上昇の一途をたどり、ついには、90,100と

    いうようにまで、進むものです。従って訓練は、第一にその犬の能力を知る事と

    飽きさせないように勤めると同時に、八分で留め、さらに訓練の終わりは必ず

    成功させて終わる。というように、しなければなりません。

    これによって、犬に自信と次回の訓練への意欲を持たせる事が出来るのです。