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箱を用いた放物線運動
ねらい

物体を水平に投げたときの運動を考えてみると、水平方向には一定の時間に一定の距離だけ進むから等速運動であり、鉛直方向には自由落下という等加速度運動である。簡単な実験でこれを確かめられるような実験道具を考えたのでここに紹介する。
 放物運動を考えるとき、教科書にはよくストロボ写真が載っているが、これはすでに出来上がっていて面白みがない。また記録タイマーでは直線運動にしか使えないし、 授業の盛り上がりも望めない。やはりきちんと実験をやり、理論的な計算とよく合うことをその場で確かめたいものである。しかし、どんな楽しい実験でも準備にあまり時間がかかると、つい忙しさに紛れてその実験に手が出せない。 だからどんな実験も、一度苦労して実験道具を作っておけば次からはいつも簡単にできるようにしておきたい。そこで考えた。
 この実験をどんなところでやればよいかを示すため、ここに仮説実験授業の「力と運動」の授業書の中の問題を紹介しておく。(参考文献a)

問題 ビー玉を水平方向に1m/sの速さで飛び出させたら、そのビー玉はどのような形を描いて飛ぶと思いますか。
 (1) 上から20㎝落ちたとき、ビー玉は水平方向に何㎝飛ぶことになりますか。
 (2) 上から80㎝落ちたときはどうですか。

用意するもの
 外法 20㎝×5㎝×40㎝の木箱二つ(演示実験の台にもなるし、小物入れにもなるし、他にもいろいろな使い方もあるのでぜひ作ってください。) 図1のような厚紙1枚 ビー玉(充実球)一つ 画鋲6個

実験のやり方
 ここに用意した箱二つを組み合わせれば、自由落下のときの0.1s毎のビー玉の高さを簡単に作ることができる。たとえば、一つの箱の高さを25㎝とし、他方の高さを20㎝としたとき、その差を取れば25-20=5㎝となり、 この5cmで事由落下0.1s後の高さを簡単に作れる。その他0.2s、0.3s、0.4sで落下する高さはどのように箱を組み合わせたときできるか考えてみてください。

こういうことは学校の実験室の椅子を利用したり、他の大きさの箱(外法 20㎝×25㎝×45㎝の箱と20㎝×30㎝×55㎝)の組み合わせによってもできる。(参考文献b)
 この箱に図1のような厚紙で作った斜面を取りつけ、その7cmの高さのところからビー玉を転がすと、その速さがちょうど1m/sで水平方向に飛び出す。(参考文献a) ビー玉は鉛直方向には自由落下運動をし、水平方向には速さ1m/sの等速度運動をするので、ビー玉の位置を次のように求められる。


時間 鉛直方向落下距離 水平方向移動距離
t=0.1s 5㎝(25―20) 10㎝
0.2s  20㎝ 20㎝
0.3s 45㎝(20+25) 30㎝
0.4s 80㎝(40+40) 40㎝

 だから、水平方向に投げ出されたビー玉の0.1s毎の位置を図2のようにして、箱の組み合わせで実験できるのである。
 こうしてビー玉を水平方向に投げ出したときビー玉の落ちてくる位置を調べるのに、普通の実験書には、カーボン紙を下に置いて、印のついた位置を後で調べるように書いてあることが多いが、ここでもう一つ考えてみた。
 このビー玉が落ちてくるところに図2のように横向きに棒を置いて置く方が効果的である。そうすればビー玉が棒に当たってカチッと音を出すことにより、 理論的な計算通りに(重力加速度g=10m/s2)で充分)ビー玉が飛んでいくことを生徒に強く印象付け授業を盛り上げてくれる。しかも棒の太さを考えると実験に多少の誤差があっても気にせず済ますことができるのはありがたい。
留意点

  1. ビー玉が水平に飛び出すように注意すること。そのため箱を正確に作ること。次に斜面の厚紙の端を画鋲四つできちんととめること。
  2. 厚紙の種類によってはエネルギー損失が大きくなって7㎝の高さのところから転がしても、計算通りv0=1m/sとならないこともあるので、 そのときは少し高めのところから転がしてv0=1m/sとなることを確かめておくこと。(たとえば、20㎝の高さのところから水平方向に飛び出させたとき、水平到達距離20㎝のところに落ちることで確かめられる。)

参考文献
 a 「科学教育研究」No.6 1971年「力と運動」とその解説 板倉聖宣
 b 「理科教室」1977年11月増刊号 「運動量と力積の実験の工夫」飯田洋治
 c 「理科教室」1976年11月増刊号 「高校物理投げ込み実験アラカルト」

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