夢も希望もない男

千鳥ヶ丘の仙人が
夢も希望もない男に訊いた
「何故、夢を持たぬ。希望を熱く語らぬ」
「なくても生きれるだろ」
「それで日々の充実があるのか?」
「ないといけないのか?充実感ってのは」
「お主恐いのか?夢に破れるのが
希望が絶望に変わるのが」
「じゃあ逆に訊くがよ。
夢を持っているライオンっているのか?
希望に燃えるヒマワリっているのか?
そんなのいるわけがねぇよ。
でも夢も希望も持ってないのに
どうしてあいつらは美しいんだ?
少なくても俺にはあいつらが美しく見える。
かっこよく見える。
それはあいつらが夢を叶える為に生きているんじゃなくて
どうやって生き残るしかないからじゃないのか。
希望なんて抱いている余裕なんてねぇんだよ。
そんなの語ったって空腹が満たされるわけでもねぇし
油断してたら逆に喰われちまう」
「うーむ・・・・。お主は人間と動物を一緒にするのか?」
「何が違うんだ?」
「それでは喰って寝て出すだけではないか」
「それだけじゃいけないのか?」
「それのどこにしあわせがあるのだ?」
「おまえ、ふざけんなよ。
喰って寝て出すことがどんなに大変か。
喰って寝て出し続けることがどんなに偉大なことか。
高望みのおまえにはわからねぇだろう。
もしそれ以上のしあわせを求めるんなら
それこそ不幸の始まりなんじゃねぇのか」
「夢を持ち希望に燃え輝くのが
人間の特権だと私は思っていたのだが・・・・」
「俺は夢も希望も持たねぇ。輝きもしねぇ」
「お主は一体何者なのだ?」
「生きものだ」


  器

歳を重ねるたび
わかってきた
自分という器
それは ちっこい
それは びっくりするぐらい
ちっこい
それが嫌で嫌で
無理してでっかく見せようとしたけど
うまくいくはずもなく
つまりはそんなことをするぐらい
俺はちっこい
そんなことをすればするほど
俺はちっこい
もうじたばたするのはやめだ
ちっこいなら ちっこいまま俺は行く
ちっこいなら ちっこいまま俺よ行け
それが おまえのでっかさだ
ちっこいなら ちっこいまま俺は生きる
ちっこいなら ちっこいまま俺は生きる
それが おまえのでっかさだ


   敗北者

敗北者というのは
負けたあとから
言い訳をする
奴等のことだ
だから
君よ
そして
俺よ
負けても
決して敗れるな


   不 幸

自分の上を見上げては妬み
自分の下を見下してはほくそ笑み
誰かと較べることでしか
幸福にはなれないなんて
人間はなんて不幸なんだろう


   やっぱ

自殺する花なんていないからさぁ
やっぱ
死ぬまで生きなあかんのやろうなぁ


作品集