つくり笑いの太陽へ

拒食 赤面 勃起不全 早漏
対人恐怖 死別 交通事故
チビデブハゲブスゲスパニック 殺人 絶望 体臭 不眠 ストーカー
病気 不倫 いじめ 離婚 レイプ
破産 倒産 就職難 リストラ 借金 犯罪 自殺 
人の数ほど悩みはあって>
星の数ほど悩みはあって
何百万年ほど悩みはあって
解決などしない
正しい答えもない
しかし無駄ではない
と思いたい
人だから悩み
人だから悩まされる
悩むのは苦しい
しかし そこから早く逃れようと
近道や安易な逃げ道を探れば
もっと苦しくなる
じたばたするのもよし じたばたしないのもよし
時が経つのは美しい
いつか いつか
いつか いつか
苦悩と友だちになれたら
この苦悩が自分とこの世を
瀬戸際でつなぐ
碇のようになってくれたとしたら
つくり笑いの太陽へ
せめて最高の苦笑いを捧げよう
つくり笑いの太陽へ
せめて最高の苦笑いを捧げよう



   黒帯のぼくが白帯に負けた時

空手の先生は言った
負けた時
その時
その人間の本性が出る
負けた時
その時
何を感じ
何を学び
どう行動するのか
勝者に
一流、二流があるように
敗者にも
一流、二流がある
負けた時
その時
その時からこそ
勝敗をも越える
勝負が始まるのだ



   オヤジギャグ

「うぅ寒っ!寒すぎて凍死しそう」
「ヒエッヒエッヒェ(冷え)。とうしよう(どうしよう)ね」
「そんなオヤジギャグ聞いたら、本当に寒くなってきた」
「そりゃ大変だぁ。早くあったまらねぇと体がこおるどぉ(cold)」

そんなくだらない小話を
いくつもいくつも
何回も何回も送り続けた
癌になった友へ



   気になる人

他人にどう見られているか
気になる人
他人にどう思われているか
気になる人
気にするなと言われても
やっぱり気になる人
他人は自分が思うほど
自分を見てもいないし
気にもかけていない
そうわかっていても
やっぱり気になる人
そんなにも自分に対する
他人の言動・行動・評価が
気になるのなら
まず あなたが人に対して
気にかけてあげるのが
筋道ではないでしょうか
という詩を書いて
この詩がどう評価されるのか
私もまた人一倍の
気になる人です



  FFS

家からいちばん近いコンビニは
FFSといって
聞いたこともないような名前だった
FFSは手作り弁当もやっていて
常連さんが
「おう!きょうは何がある?」
と入ってくれば
ふつうのどこにでもいるようなおばさんは
「きょうは珍しくエビフライがうまくできたねぇ」
「珍しくか・・・・」
「真っすぐだからねぇ」
「形かよ。味は?」
「味はいつもと変わらんねぇ」
「ま、いいや。いつものようにやってくれ」
「はい。いつものようにね」

マイベイビィが初めて熱を出した時
私はFFSへ走った
ポカリスエットのペットボトルを三本
レジに並べると
FFSのおばさんは
「あらあら、お子さんが風邪なの?」
と言い、返事をする前に
「大変ねぇ、うちの子も小さい時に
よく熱を出してねぇ。
でも小さい時に病弱だと
大きくなってから強くなるよぉ。
うちの子、いま体育の先生やってるもの」
と、手と口を同時に動かし
お釣りを渡し
「これ、クジ。おまけしとくね」
そして私が商品を受け取ると
FFSのおばさんは
「ありがとうございましたー」ではなく
「お大事にねー」と言ったのだった

同じ商品(もの)を同じ値段で売っていても
レジ(そこ)に誰がいるかで
コンビニは薬局にも大衆食堂にも
緊急夜間外来にもなるものなのだ
ポカリスエット三本で
子どもが熱を出したと察するコンビニ
FFS
ふつうのおばさんがいる
聞いたこともないような名前のコンビニ
FFS
お近くにお越しの際は
どうか ご贔屓に





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