刷毛の博物館



刷毛の歴史とカタチ





  1. 1300年を誇る刷毛の歴史
  2. 巧みな先人から伝わる刷毛のカタチ
  3. 刷毛の材料と使い分け
  4. 熟練の技が活きる刷毛作り
  5. 刷毛のひとくちコラム(使い方・用語・サイズ)
  6. 水性塗料に要求される刷毛とは。









1300年を誇る刷毛の歴史
我が国で広い意味の刷毛として、漆刷毛、糊刷毛、おしろい刷毛などが元祖と言われていますが、いつ頃使われるようになったかは定かでありません。
ただ、奈良時代の和銅3年(710年)頃の漆器工房から、漆刷毛と思われる原型が平城京跡から発見されています。
もともと、刷毛は毛筆から変化したと思われ、古くは屏風、襖など、紙を上貼りする際、筆を数本束ねたものとして使われていたようです。
鎌倉時代から室町時代にかけて、襖、障子、番傘の布貼り、紙貼り用として糊刷毛(鹿毛、猪毛)が盛んに使われ始めました。
さらに江戸時代では、襖や障子が一般の生活様式に取り入れられ、染色技術の発展に伴い、糊刷毛の需要が増大。それにより、刷毛づくりも専業化し各自家伝の秘宝を生むことになります。
明治初期では、ペイント刷毛が登場。工業の発展とともに、工業用や金属ブラシが製造されています。その後、時代が進み、塗料の発展と塗装工程の変化はめざましく、用途に応じて刷毛の形状、性能、原毛の改良など、塗装分野を大きく広げながら、今日に至っています。



















巧みな先人から伝わる刷毛のカタチ
刷毛の木地(柄)
刷毛を作るのに、なくてはならないのが柄です。
古くは、板状のものを取り付けて使われていましたが、
手先が器用で、手工具を工夫するのが巧みな先人により、我が国独特の形状となりました。
また、日本は林業が盛んであったこともあり、刷毛板も手軽に作られていたようです。
木材は、木地に気品のある桧材(木曽桧)が主として使われていますが、国内の木材市場に頼れない現在では、高級刷毛以外は輸入材(桧、松、ブナなど)が多く使われるようになっています。
いつ頃使われるようになったかは定かでありませんが、今日に至っています。




















刷毛の形と広がり
刷毛は使い方によって、形に工夫と配慮がなされています。
寸筒型(1.6)、筋違い型、
平型などが日本独特の形状ですがアメリカ、ヨーロッパなどでは、ほとんどが
コッピー式の刷毛が使われています。
明治時代の塗装職人は ”刷毛3本” と言い、
竹(豆)刷毛(0.5号、15mm)、筋違刷毛(30mm)、
寸筒刷毛(45mm)で、作業ができていましたが、
現在では、多様化した塗料、用途に応じて、
各種の刷毛が作られ、ユーザー様のどんな要求にも
ご満足いただけるようになりました。
また、寸法は、地域的な習慣により、
関東サイズ(9掛)と関西サイズ(8掛)がありますが、
これも販売市場が拡大されるにつれ、
ユーザー様のニーズに合ったものが優先されるようになり、
地域差も少なくなっています。
























刷毛の材料と使い分け
刷毛の材料は当初、原毛(獣毛)の加工技術が無く、きびの毛、麻、藁みご、棕梠の毛など、植物の繊維を重ねて用いられていました。
その後、動物の毛が使用されるようになりますが、獣毛の種類もいろいろ。
使う長途によって、それぞれの毛を混ぜ合わせて作られています。
使用される毛は、馬毛、山羊毛、羊毛、豚毛が主で、良毛の条件は、まず毛先が繊細であること。
それに、毛腰が良く、弾力性に富み、手触りがソフトで、色つやが良いものとされていますが、これらの条件も、動物の産地の環境、飼育の状況、年齢、季節などでも微妙の変化があり、良質の原毛の入手は、容易なことではありません。
また、世界的に原毛の供給が徐々に減少しているのが現状です。


























毛色と原毛の割合
白毛・・・・・
一般に山羊毛80%・豚毛10%・馬毛   10%(弾力性があり塗料になじむ)

赤毛・・・・・ 馬毛・ロバ家(尾毛)
(腰が強く油の吐出しが良い)
黒毛・・・・・ 黒豚主体・馬の天尾(毛長向き)
胡麻毛・・・ 山羊と馬の混毛(油性・鉄骨橋梁向き)




馬毛

馬毛には、大きく分けると天尾、振毛、胴毛、足毛の4種類があります。特に尻毛の長い毛を取り除いた後に残る、約12cm(4寸位)の新毛を使ったのが
天尾で、最高級品と言われています。弾力性、耐久性と塗料の含み、優れた特徴を備えています。振毛は、たて髪の毛。先毛を振り先、切れ毛をフリといい、天尾の後に続く品質です。
胴毛は、馬の胴体に生じる毛。毛が短く柔らか、弾性が無いので、高粘度の塗料には適しません。
足毛は、シマ毛とも言われ、ヒズメの部分のやや長い毛。毛質は擦れているため、優良品クラスではありません。胴毛よりさらに柔らかです。
また、馬毛のことを一般に
熊毛とも言われています。
駒毛、小馬毛からの転用したものと、馬毛は黒褐色で熊の手に似ているので熊毛と言われる2つの説があります。
山羊毛

山羊毛の最たる特徴は、毛が細く柔らかく、使い出しの良さです。
山羊のアゴ髭(ヤンス)が主として使われ、尾毛(ヤンオ)がともども、柔らかい上に腰があり、白毛の高級刷毛に必ず使用されています。

人毛

頭髪を用い、太くて腰が強く、漆刷毛に使用されています。
羊馬

馬毛に次いで需要が多いのが羊毛です。綿状の柔らかい毛を櫛ですいた後に残る硬い毛を使います。背の部分の毛をテイタン(堤短)と称し、最も良質です。羊毛は、一般に凸凹があり、塗料含みが良く、毛質は柔らかいようでも適度な弾力を持ち、ラッカー刷毛に最適。また、ラック刷毛、水性刷毛、糊刷毛にも用いられています。
ナイロン繊維

ナイロン繊維の毛先を割って自然の感触を生み出したタイネックス繊維、カネゴート繊維が使用されます。現在では、万能用刷毛として多用途に使われています。
豚毛

豚毛は、毛質が太くて腰が強く、弾力性があります。毛先が2〜3筋に割れているので、毛質の強い割りに毛先の柔らかいのが特徴です。高粘度用の刷毛に使用されていますが、多くは混毛用として、刷毛の腰の調子を取るのに使用されています。
植物繊維

一般には、棕梠(ヤシ科・常緑高木の葉柄の基部分)の毛を使用し、植物性の毛質として、薬品刷毛に使われています。
鹿毛

その他、柄出しとして最高の硬さとしなりが生まれる鹿毛を使った特殊な刷毛があります。



馬毛の等級
1 天尾だけ 最高級品 4 フリ先とフリ 普及品
2 天尾とフリ先 1級品 5 フリ 下級品
3 フリ先 2級品 6 切れ毛 タール塗り・洗い刷毛












熟練が活きる刷毛づくり
刷毛づくりは、微妙で繊細な作業が多く、すべて機械化による合理化はできません。
ほとんどの工程が昔ながらの手作業で作られています。
常に高品質な刷毛を作るには、長い経験と実績、優れた技術が求められます。
原毛を厳選、それぞれの工程から最終検品に至るまで、1本1本に熟練した伝統の技と精神が活きています。







1 毛組

刷毛の生命を吹き込む工程。何種類もの毛を組み合わせ、束にします。
2 小分

刷毛のサイズに応じて毛を規格通りに秤量します。
3 根付

毛先加工の後、寸法切をして」根元に切り戻します。
4 付前

毛先を整え、根元に細い紙を巻きます。
5 玉付

毛丈を計り、柄にはさみ込み、両側に桜皮を張付けます。
6 綴

締め機でしっかり固定し、穴をあけ、銅線(又は、三味線の糸)で縫い付けます。
7 仕上摺

毛先を金櫛ですき、小刀でおくれ毛を切り除く仕上げ工程です。
8 紙巻

セロハン紙で包み、毛先を保護します。ハンドル研磨などの工程を経て、最終検品














刷毛のひとくちコラム(使い方・用語・サイズ)








刷毛に関する塗装用語
ダメ込み ベタ刷毛 毛引(溝)
先のまとまりが良くて横に広がらず、腰砕けのしない刷毛で入隅や出隅部などのすみを揃えて塗ることです。 平刷毛の職域呼称で、水性・鉄骨用」さど、広い面を塗る刷毛のことです。 銅線で綴じた時、締め位置が一定になるよう、また銅線が直接物に触れないよう、美観」を兼ねたキリ溝のことです。
駄目廻り 船刷毛 割り板
立ち物の角、段差のある縁廻りなどを手直しをして、仕上げることです。 大型の平刷毛の別称です。 筋違いのハンドル、または平のハンドルで、一枚の板を割き、毛を挟み込む柄のことです。
スミ切り 骨物 張り板
他所との境、細い溝部分のスミを美しく塗り分ける塗り方です。 鉄骨・橋梁、パイプライン設備、鉄柱等に使う刷毛の略呼称です。 筋違いのハンドル、または平のハンドルで、形成前に二枚の薄板を張り合わせて作り出した柄です。
ひっかけ 丸型刷毛・江戸型刷毛 玉毛(束毛)
鉄骨刷毛の別称です。 平刷毛のハンドルで、関西方面は両肩の部分が丸く成り、関東方面は角ばってできた柄のことです。 原毛(規定寸法に加工した物)をそのまま刷毛玉に揃えた製品です。
野丁場 綴じ穴 沈み
鉄骨や橋梁など大型建造物の塗装現場です。 ハンドル部と毛の玉を銅線やしゃみ糸で縫い込む時のキリ穴を言います。 主体の原毛に他の種類の性質を持った短い毛を混ぜ込まれた物、それを沈み毛とも言います。
切り毛 釘打 染色刷毛
長い原毛を定寸に切り揃えて毛先を人工的に加工した毛のことです。 別製の釘を仕上げの最後に打ち込み、毛玉のゆるみを補完します。 専門職と趣味に分かれ、染め物・染み抜き・絵柄書き・型抜き・絵画。墨絵などで使われる刷毛です。
毛腰 桟(サン) 鋳物刷毛(筆)
毛の弾力を表現する場合に使われる簡略語です。 表具、糊刷毛のような平たく巾のある刷毛に、板部分が反らないよう、保護的に張る薄板のことです。 砂の鋳型で型作りした面に、砂の隙間と剥離を良くするために、カーボン粉を塗る為の刷毛です。
金巻き コッピー 鹿毛
金属で型作った中に、原毛を沈め込み、できた毛玉で作った刷毛のことです。 一般品として豚の毛を使用し、毛玉が平たく金属で巻き、塗り込み用としてできたものです。 本当の鹿の毛ではなく、実際は」馬の良質毛を指します。
びょう ダスター 熊毛
ハンドルの割目が割けないよう、保護と美観を兼ねたリングです。 ラスターとも言われますが、一般的には掃除用として使われる意味があります。 馬の尾毛を指して呼びます。昔は、九州肥後の馬毛が、熊の毛に似ていることからの由来です。
しゃみ糸 ラック刷毛    
三味線の糸をいい、この糸で綴じている刷毛は薬品、酸系に強く、衛生的にも良好です。 昔、ニス刷毛をシケラックと呼び、その語源が簡略化され、白毛筋違刷毛を総称してラック刷毛と呼ぶようになりました。金巻ラック刷毛のラックとは別の意味です。     









水性塗料に要求される刷毛とは。
最近、地球環境問題は大きなうねりとなって押し寄せています。
こうしたグローバルな環境保全意識の高まりは、塗料・塗装業界においても例外ではなく、「塗料水性(系)化」の流れはますます加速の度を強めてきています。
確かに、従来の溶剤系塗料から水性塗料への移行初期には、乾燥に時間がかかるという作業性の悪さや、耐候性をはじめとする塗膜性能上の欠点、価格面での問題がありました。
しかし、その後の各塗料メーカーの研究開発力や技術力の進展によって、以前の諸問題をクリアー。
今日では、市場ニーズに応じた改良が加えられ、溶剤塗料を凌ぐ水性塗料が製品化されています。






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