◇◆木曽川の近代化遺産◆◇




 木曽川水系には現在31の発電所が稼働中で、総出力は一つの水系として日本で初めて100万キロワットをこえました。当時の大同電力社長福沢桃介は、木曽川の水力発電開発に尽力し電力王と呼ばれ、木曽川の水力発電の歴史にその名を刻んでいます。
  福沢桃介と木曽川開発
  明治元年埼玉県で生まれた福沢桃介(旧姓岩崎)は、慶応義塾在学中に福沢諭吉の目にとまり、福沢家の養子となりアメリカに留学、その後株により莫大な財を築きました。
 明治42年名古屋電灯の顧問として招かれ、木曽川の水力発電に着目、大同電力を創立し7つの発電所を建設(マーク)しました。
  福沢桃介と川上貞奴
 川上貞奴は明治4年東京生まれ、芸姑となり伊藤博文など著名人の寵愛を受けました。明治23年川上音二郎と結婚、新派演劇の発展に尽くし、日本で最初の女優「マダム・貞奴」として国際的にもその名を馳せました。
 音二郎の死後、桃介と愛人関係になり、木曽川の発電所建設の現場にも良く姿を見せました。その時現地の宿舎として桃介と逗留した山荘が当時の状態に復元され、福沢桃介記念館として公開されています。また桃介と貞奴が暮らした名古屋市東区にあった「二葉御殿」と呼ばれた瀟洒な洋館も、文化のみち二葉館として復元され、貞奴が晩年を過した鵜沼別荘(晩松園)や墓のある貞照寺も現存しています。
 貞奴の生涯は、「春の波濤」として昭和60年NHKで大河ドラマ(桃介:風間杜夫、貞奴:松坂慶子、音二郎:中村雅俊)になりましたが、視聴率は低迷、著作権問題でも裁判になり、現在ビデオ・DVD化されていないのが残念です。
  佐藤四郎と発電所デザイン
 木曽川の水力発電所のデザインの多くは、佐藤四郎という建築家によってなされています。佐藤は桃介によって大同電力に招かれ、読書発電所を手始めに今渡り発電所まで、木曽川で7つの発電所(マーク)の設計を手がけています。
 当時から木曽川は風光明媚な名勝として知られており、発電所の建設によって起こる風致問題による地元の反対運動を危惧した桃介は、佐藤に周囲の景観に配慮した発電所のデザインを指示しました。佐藤はそれまでの発電所の妻屋根を陸屋根に変更し、中世の城砦風や小塔を設けたり、アールデコを採用し、7つの発電所の全ての外観意匠を巧みに変え、様式主義デザインで近代的なRC建築を設計しました。
 佐藤の設計した発電所は、時を経た現在でも周囲の景観に潤いをあたえ、現役で稼動する木曽川の水力発電の歴史を語る近代化遺産として、これからも生き続けていくことでしょう。

発電所・ダム・関連施設
 ※水源→下流の順に表示してあります     福沢桃介建設  佐藤四郎設計
名称 所在地 河川名 竣工年 設計/施工 構造/特徴
 長野県
 三浦ダム・発電所  木曽郡王滝村 王滝川 1942(S17) C重力式
 御岳発電所  木曽郡三岳村 王滝川 1945(S20)
 常盤発電所  木曽郡三岳村 王滝川 1941(S16)
 城山発電所  木曽郡木曽福島町 木曽川 1938(S13)
 寝覚発電所  木曽郡上松町 木曽川 1938(S13)  佐藤四郎/
 橋場発電所  木曽郡上松町 木曽川 1929(T04)
 桃山発電所  木曽郡上松町 木曽川 1923(T12)  佐藤四郎/ RC/キャッスル様式(中世の城砦風)
 相之沢発電所  木曽郡大桑村 伊那川 1938(S13)
 田光発電所  木曽郡大桑村 伊那川 1924(T13)
 須原発電所  木曽郡大桑村 木曽川 1922(T11) 煉瓦造/八角形の小塔
 大桑発電所  木曽郡大桑村 木曽川 1921(T10) 煉瓦造
 与川発電所  木曽郡南木曽町 与川 1926(T15)
 読書発電所
 (国重文)
 木曽郡南木曽町 木曽川 1923(T12)  佐藤四郎/ 煉瓦造/アールデコ様式
 桃介橋(国重文)  木曽郡南木曽町 木曽川 1922(T11) 吊/読書発電所建設の資材運搬用
 旧福沢桃介南木曽別荘
 (福沢桃介記念館)
 木曽郡南木曽町 木曽川 1922(T11) 木2/読書発電所の現場監督のため桃介が貞奴と逗留
 柿其(かきぞれ)水路橋
 (国重文)
 木曽郡南木曽町 柿其川 1923(T12) RC開腹アーチ
 妻籠発電所  木曽郡南木曽町 蘭川 1934(S09) RC
 蘭川発電所  木曽郡南木曽町 蘭川 1925(T14)
 対鶴橋  木曽郡南木曽町〜
 中津川市坂下町
木曽川 1919(T08)  石川栄次郎/  吊橋/木曽川最初の発電工事用吊橋
 賤母発電所  木曽郡山口村 木曽川 1919(T08) 木造一部煉瓦造
 岐阜県
 落合発電所  中津川市落合 木曽川 1926(T15)  佐藤四郎/
 大井ダム  中津川市蛭川〜
 恵那市大井町
木曽川 1924(T13)  
 佐野藤次郎/石川榮次郎
玉石C重力式
 大井発電所  中津川市蛭川 木曽川 1924(T13)  佐藤四郎/大倉土木 RC
 笠置ダム  恵那市飯地町〜
 瑞浪市
木曽川 1936(S11)  石川榮次郎   C重力式
 笠置発電所  恵那市飯地町 木曽川 1936(S11)  佐藤四郎/佐藤組 RC
 旧八百津発電所
 (旧八百津発電所資料館)
 加茂郡八百津町 木曽川 1911(M44)  不詳/早川組 煉瓦造/木曽川水系初の発電所
 兼山ダム  加茂郡八百津町〜
 可児市兼山町
木曽川 1943(S18)  日本発送電/間組 C重力式
 今渡ダム  可児市川合〜
 美濃加茂市
木曽川 1939(S14)  石川榮次郎  C重力式
 今渡発電所   可児市川合 木曽川 1939(S14)  佐藤四郎/間組 RC/木曽川最下流のダム式発電所



橋(道路・鉄道)


名称 所在地 河川名 竣工年 設計/施工 構造/特徴
 長野県
 鬼渕橋(旧木曽川橋梁)  木曽郡上松町 木曽川 1914(T03) 鋼プラットトラス/森林鉄道→道路化
 大鹿淵橋  木曽郡王滝村 木曽川 1923(T12) 鋼ソリッドリブ・アーチ/森林鉄道→
道路化
 大手橋  木曽郡木曽町 木曽川 1936(S11)  中島武/ RCローゼ
 久保洞水路橋  木曽郡南木曽町 1909(M42) 石アーチの水路橋
 片平橋  木曽郡楢川村 奈良井川 1935(S10) RC開腹アーチ/廃止
 岐阜県 
 弥栄橋  中津川市坂下町〜
 南木曽町(長野県)
木曽川 1928(S03) S
 桃山橋  中津川市駒場 中津川 1933(S08) RC
 新中津川大橋  中津川市駒場 中津川 1933(S08) RC
 第1木曽川橋梁台  中津川市中津川 木曽川 1908(M41)
 山ノ田橋梁  中津川市中津川瀬戸 山の田川 1922(T11) 石/旧北恵那鉄道
 旧北恵那鉄道木曽川橋梁   中津川市 木曽川 M19製→
1923(T12)転用
 パナウル/パテント・シャフト社 鋼ダブル・ワーレントラス/廃止
 東雲橋(しののめ)  恵那市〜中津川市 木曽川 1931(S6)  日本橋梁 鋼ボーストリング・トラス/大井ダム側
 JR太多線木曽川橋梁  可児市〜美濃加茂市 木曽川 1926(T15) T15東濃鉄道から買収
 太田橋  可児市〜美濃加茂市 木曽川 1927(S02)  大阪鉄工所 鋼ワーレントラス
 愛知県
 犬山橋  各務原市〜
 犬山市(愛知県)
木曽川 1925(T14) 鋼ワーレントラス/道路鉄道併用橋→
H12鉄道専用化
 名鉄名古屋線木曽川橋梁  笠松町〜
 一宮市(愛知県)
木曽川 1934(S09)
 木曽川橋  笠松町〜
 一宮市(愛知県)
木曽川 1937(S12) 鋼ブレーストリブ・タイドアーチ/R22
 三重県
 尾張大橋  桑名郡長島町 木曽川 1933(S08)