当初は色々と書こうとも考えていたが、大河ドラマの主役となったことで至るところで取り上げられるようになったから、今さら詳しく総評を書くという気にはならなくなってしまった。その肝心の大河ドラマで、とんでもなく酷い描かれ方をされてしまったのは残念だ。
総評としては書かないが、一つだけ関ヶ原の合戦について触れておく。直江兼続関連の本(特に小説)でよく見かけるのが、関ヶ原の際に石田三成と手を組んで徳川家康を挟撃する密約があったというもの。すなわち、有名な「直江状」で家康を挑発して会津方面に誘い出し、その隙に乗じて石田三成がその背後で挙兵するという筋書きだ。 しかし、現実には、西に引き返した東軍(家康)を上杉軍は追撃しなかったし、その前後の状況などから見ても、上杉方が家康を挑発したというのは辻褄が合わない。家康を東西から挟撃するという策は確かに壮大で小説などで取り上げるには打って付けなのかもしれないが、その結末が「実行しませんでした」というのでは、なんともお粗末すぎる。 小説であればその辺を創作しておもしろく描きさえすれば何の問題もないのだが、『三国志演義』のように古くから定着している作品ならまだしも、直江兼続はそれほど知名度があるわけではない題材で、どの作品でも右に倣えで同じような設定が使われているというのは、個人的にあまり好きになれない。
(2009/7/27)
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